異類婚姻譚/本谷有希子

 

 

 

恒例。芥川賞受賞作をマンスリーセンテンススプリングにて読む。

 

本谷有希子さん、大分前から候補になっていたのは存じ上げていたし、昔はテレビでも時々お見かけした気がするが、作品を読むのは初めて。

 

本作のような表現は「マジックリアリズム」というのか(そこまで文学に詳しくないので)わかりませんが、技巧も構成も十分に読ませてくれる作品。

 

時間があれば若い頃の作品と読み比べしてみたいところながら、そこまでの余裕は無い生活。

スティーブ・ジョブズ(2016) by ダニー・ボイル監督

 
その名の通り、スティーブ・ジョブズを扱った映画。
 
監督・脚本・主役が豪華なので、映画ファンとしては嬉しい。特に脚本家は僕の好きなアーロン・ソーキン*1だ。
 
本作の特徴は、実在のスティーブ・ジョブズが現実社会で大きなアイコン過ぎて、多くの観客は映画を見ながらも常にこの人の実在感を意識してしまうということだろう。冒頭から出てくる一風変わった20代の青年は、最終的には世界を変える男だ、と画面を見ながら常に生々しく思ってしまう。脚本のアーロン・ソーキンはこれを前提においた上で本作の構成を組み立てていると感じた。
 
この映画はあたかも、現代の「神話」のように感じられた。そう、これは、今のコンピューティング社会の起源を描いた「神話」なのだ。実際、ジョブズは一つの生態系を創造した神だ。実の親に捨てられた子(ジョブズ)が、資本主義という父(スカリーに人物として表徴されている)と戦い、新たな世界を創造した。一神教の神は気まぐれで、常人には理解できないほど理不尽なものなのだ。
 
アップルのビジネスは、最も偏屈で拡張性に欠けると思われていたが、結果的には最も世の中人々に受け入れられた。僕は、このあたりに初期「一神教」との類似を読み取った。ソーキンはその辺りも意識してシナリオを起こしていると思う。

*1:The West Wing, Money Ball, Social Network...

品格ある日本人の英語/曽根宏

 
ーネイティブ信仰を捨てれば、必ずうまくなる!!ー 品格ある日本人の英語 (CD付)

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ここ数年色々な英語本、英語学習論を読んできた。
 
英語界には
1、「ブロークンでも良い。もはや英語話者の多数は、ESLだ。とにかく怖じ気づかずにガンガン話せ」
と、その真逆で
2、「ブロークンや無手勝流では結局のところ尊敬されない。どうせ勉強するなら、しっかりと学ぶべき」
という二つの極論がある。
 
本書の著者はこの「中間」から「上記の1寄り」くらいの立場で「ネイティブを過剰に意識することは必要ないが、人間として、日本人として中身のある中身のある話をせよ」とおっしゃっている。正論なのだと思う。(元富士通マッキンゼーで、M&Aコンサル会社と英語学校を興されたというご経歴が面白かった)
 
自分もここ最近の勉強では上記2の立場、すなわち「ネイティブ風」を過剰に意識していたかもしれない、と気がつかされた。ただし、依然として、どうせ勉強するなら正確な文法・正しい発音、というのはやった方がいいとは思っている。これは、最終的なゴールをどこに置くかにより、人によって違ってよいのだろう。
 
いずれにしろ、1か2か?と迷う前に、とにかく勉強あるのみの日々。

 

なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?--数千年に一度の経済と歴史の話/松村嘉浩

 

なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?--数千年に一度の経済と歴史の話

なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?--数千年に一度の経済と歴史の話

 

 

知人からふと借りた本。ざっと流し読みした。

読んでから、Amazonのレビューを見たのだが、予想以上に高い点が並んでいるので驚いた。僕としては、割と普通の議論を展開している本だな、との感想だったし、ところどころ「牽強付会」な議論もあるように感じた。

 

黒田日銀、あるいは世界経済は、どこへ行く、答えは誰にも分からない。(ただし、「数千年に一度」とか「成長は終わった」とかいう議論には、他の論者の語るものも含めて、今ひとつ乗れない。ロングスパンで世界史的に考える視点は重要だとは思うけれど。)


ところで、この著者は(本書でのキーワードになっている)「既得権層」なのかどうなのか、客観的に/ご本人の認識的に…とは思った。

鄧小平/エズラ・F・ヴォーゲル、橋爪大三郎

 

 

トウ小平 (講談社現代新書)

トウ小平 (講談社現代新書)

 

 

 
20世紀の後半、中国は、新中国としてみごとに復活を果たした。その復活の道筋をつけた指導者は誰かと、後世の歴史家がふり返るとすれば、その立役者こそ、毛沢東ではなくて、鄧小平に他ならない。(ヴォーゲル博士)

エズラ・ヴォーゲル先生を橋爪先生がじっくりとインタビューしている。こんな面白気な本が出ていたとは先週まで知らず。(SNSで友人が推薦してくれていたので気づいた。便利な時代だ)
 
僕は、中国の現代史に前から興味を持って「毛沢東秘録」「鄧小平秘録」「チャイナ・ナイン」等々、コツコツと本を読んできたこともあり、本書は大変興味深く*1読むことができた。電車内で思わず下車駅を乗り過ごしそうになるほど没頭してしまった。特に前書きとプロローグが面白かったので一気に引き込まれてしまった。
 
本書は鄧小平の生涯を順に語る、という体裁でクロノジカルに書かれている。僕は、本書はどう「天安門事件」を評価するのかな、と思いながら読み進めたが、(西洋の一流の学者がこういう解釈をするのかぁ)という、なかなか興味深い(Controvertialであると思う)な内容だった。
 
あと、本書では、あまり強調されていないが重要だと思うことはは、鄧小平は「実務」もバリバリに処理能力が高かった(らしい)ということだろう。だからこそ、三回失脚したのに(請われて)復活、ということがあったのだと思う。
 
それにしても、ヴォーゲル先生は、日本と中国を研究するために、それぞれの言語を完全に(読み書き会話)習得してしまったとのこと。(本書のインタビューは日本語で実施されたとのこと)。超人のように思える。

*1:ただし、中国現代史の基礎的なことがあまり知らない人が読んで普通に楽しめるのかどうかは、分からない。基礎的なことはすでに知っている人向けのような気もする。

損したくないニッポン人 (講談社現代新書)/高橋秀実

 

 著者の高橋さんは前から好きなノンフィクションライター。タイトルも非常に惹かれるものがあったけれど、書き下ろしではなくて雑誌連載をまとめて新書にした、ということだった。もう少し理論的・深い考察があると良いと思った。

 

タイトルから、アダム・グラントの Taker,Matcher,Giverの話を思い出して勝手に高い期待した自分が悪いとは思うのですが。

子どもにプログラミングを学ばせるべき6つの理由 「21世紀型スキル」で社会を生き抜く

 

子どもにプログラミングを学ばせるべき6つの理由 「21世紀型スキル」で社会を生き抜く (できるビジネス)

子どもにプログラミングを学ばせるべき6つの理由 「21世紀型スキル」で社会を生き抜く (できるビジネス)

 

プログラミングについて、言語そのものというよりも、そもそも前提となる知識が乏しいので、まずは読んでみた。(そんなに、プログラミング教育について前のめりなわけではない)

そんな読者である自分にとっては、概要を掴むことが出来て良い本だった。無料のWEB記事等でも本書くらいの情報はつかめるかもしれないが、紙の少し大判な本でまとめてパラパラしながら読める、というのはそれはそれでありがたい。