レイヤー化する世界/佐々木俊尚

 Kindleでタイムセール的なディスカウントをされていたので「勢い」で、買ってしまった。

 前半から三分の二くらいのI・ウォーラスティンの世界システム論的な世界史のおさらい部分は、参考文献の数冊を既に読んでいた私には、個人的には新味は無い。さらっと流し読みした。しかしながら、こういう具合な大きなパースペクティブで世界を見ることは重要だと思うし、「帝国」「世界システム論」などの学術的成果を一般向けに非常にわかりやすくまとめているのは佐々木氏の力量だと思う。(このレベルの力量も、見識も無いのに佐々木氏を一方的に批判する人が少なくないのはおかしなことだと思っている。ネット有名人の有名税なのだろうか。大変だな、と思う。)



 後段のレイヤー化のところが本書の主題だ。ここはもう少し掘り下げても良かったのではないかと思った。国境が揺らぎ、ITを媒介して国を超えてつながり、人が様々なレイヤーで生きるというところくらいまでしか語られていないように感じたが、そこで言語の壁はどう作用するのか、とか、レイヤ−化を超えて残る国別のエートスはあるのか、とかその辺まで掘り下げてこそ本書の問題提起が生きてくるのではないかと思った。