私の文学漂流/吉村昭


私の文学漂流 (ちくま文庫)

私の文学漂流 (ちくま文庫)



数年前から、吉村昭の小説とエッセイを少しづつ読んでいる。この人の「生真面目さ」は信頼できる。



吉村氏は、若い頃に死線を彷徨う大病をされ、その後、文学の道を志して、大学の文学サークルの後輩と結婚する。

そして、芥川賞の候補に何度もなるようなレベルまで評価されるものの、結局受賞できないでいるうちに、なんと才能に溢れ(かつ確固たる信念を持っていた)た奥さんが先に芥川賞を受賞…。追い込まれた吉村氏にやがて転機が訪れ…、という自伝エッセイが綴られたのが本書。


一個の、キャリア論、プロ論としても読むことができる大変面白い本である。
(あるいは、共稼ぎ夫婦論としても面白いと言えるかもしれない)



文章も僕好みの美文で、読んでいて気持ちが落ち着く。



吉村昭記録文学については、まだまだ読破不足の自分である。今後コツコツ読んでいきたい。


生きておられれば、この東日本大震災についてのコメントを最も聞いてみたかった方である。



吉村昭入門としては以下のエッセイ集もとても良いです。


わたしの普段着 (新潮文庫)

わたしの普段着 (新潮文庫)