砂糖の世界史/川北稔
- 作者: 川北稔
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1996/07/22
- メディア: 新書
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「砂糖」という「世界商品*1」を通して、イギリスを中心とした世界全体の歴史を語る本。「グローバリゼーション!」と、誰もがなんとかの一つ覚えみたいに言う時代だからこそ、こうした歴史の基礎認識が大事だと痛感させられた。
記述は、大変に平易で読みやすい。ジュニア新書ということもあり、あっと言う間に読めてしまう分量でもある。ゆっくりと、もう一度、読んでみたい。
本書は、100の見識をお持ちの方が軽く5くらいを披露して書いた本、という印象を受ける。いわば、安定感のある高級車のような走り。5の見識を持つ著者が5を書いている本とは全然違う。
今の時代の「世界商品」は何だろう。それが、これからどういう世界構造を導くのか、興味は尽きない。
メモ
・大航海時代の原動力は、「キリスト教の布教」という宗教的情熱だけではなく「砂糖をはじめとする有益な農産物を求めて」という側面があった。
・砂糖の栽培は地味を弱らせる。⇒次々と開拓が必要。また、奴隷がどうしても必要。
・ブラジルだけがポルトガル語の理由。スペインと教皇分界線でわけあった際の名残。
・いつ読んでも、奴隷貿易の話は気が滅入る残酷さ。英米西葡は、偉そうに人権説く資格あるのか?と思う。
・砂糖等の貿易による富の蓄積が、イギリスの産業革命を準備した。
・ちなみに、ボイコット、という言葉は、ボイコット大佐、という実在の人物に由来する。
・労働者を朝からハイテンションで働かせるために、朝食という習慣が産まれ、砂糖入りの紅茶が普及した。
*1:この概念がまた面白い