「思考軸」をつくれ/出口治明


「思考軸」をつくれ-あの人が「瞬時の判断」を誤らない理由

「思考軸」をつくれ-あの人が「瞬時の判断」を誤らない理由


最近読んで、個人的にかなり共感度の高かかった、出口治明氏の本を更に読む。


世界観、歴史観を持ち、それでいて実務にも長けていて、リベラル思考。まるでスーパーマンのようだ。伝統的大企業である日本生命に「本当に、こんな人がいたのかいな」と驚くばかり。(ただし好奇心旺盛過ぎて、ほとんど家で食事をしたことがなく、貯金も無い、そうで、その点だけは心配)


本書のメインテーマとなっている5つの思考軸(敢えて紹介しませんが…)も、とても合点がいくし、随所に出てくる面白い表現にも膝を打つ。


たとえば、「日本は、世界の中で、アメリカや中国と卓を囲んでマージャンをしているようなもの。自分の手牌だけ見ていてもダメで、相手の手牌も想像しながらやらないと、ゲームには勝てません」という表現は「絶妙なたとえ話だな」と思った。


内容から一つ紹介するとすれば、出口さんの「戦後日本の発展」に対する認識が、普通の「日本の成功した経済人」とは違う点が興味深い。成功した経済人は普通、戦後の日本の成長について「日本人の努力、勤勉性、日本的経営の成果だ」と言うし、経営学者もそんな風に解説することが多い。しかし、出口さんは「もちろん、それもあるけれど、世界史的な構造の中で神風が吹いた、ということもあるのではないですか。その事を冷静に考えないといけません。人間の能力なんて世界のどこでも対して変わらないのですから。日本人だけを特別視して感傷に浸っても、これから先に必要な答えは出てきません。」と説く。グローバル人材、ということを考えるときに、こうした発想が、凄く大事だと思う。


そもそも、出口さんが尊敬する人物は「林則徐(清朝末期の官僚)」という記述もあって、尊敬の理由(本書を読んでください)も、なるほど、と思わされる内容だった。


本書では、「日本のビジネスマンはインプットの絶対量が足りない」と一刀両断している。もっともっと本や旅で勉強すべきだ、と。僕も「インプット」にかけてはある程度の量を確保していると自信を持っていたが、出口さんのレベルには全く達していない。まだまだ精進しよう。巻末にブックリストもついているので参考にしたい。というか、最近、出口さんがツイッターで「最高の一冊」と言っていた「ハドリアヌス帝の回想」買っちゃいました。


それにしても、なんでこのすばらしい本にアマゾンレビュー6件程度なのでしょう?「もしドラ」よりも、「勝間本」よりも、この本に書かれているような考え方が広まって欲しい、と思います。