円高の正体/安達誠司
- 作者: 安達誠司
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2012/01/17
- メディア: 新書
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佐々木氏の「弱い日本の強い円」の対比として、後から出た(今年1月に出たばかりの)この本も読んでみた。
こちらの方はいわゆる「インフレターゲット論」「量的緩和もっとやれ」論者であり、「円高は悪」と断言している。(この点、佐々木氏とは真逆に近い評価だ。)
本書の中で評判になっている「修正ソロスチャート」は確かにとても、勉強になった。
しかし、僕としては、佐々木氏の議論の方が説得的だった。もう少し言うと、本書を読んで、前から、インフレターゲット論について感じていた違和感がもう少し具体的に自分自身で理解できた気がする。
その違和感は、インタゲ論は論理としてはおかしくないのだが、「畏れと責任を知らない論理」に見えるし、「為替が変われば全て解決」という風に議論が流れがちである点にあるようだ。
また、佐々木氏の方の議論が、多少、日本社会全体を幅広く見渡して、生活者を守るという視点を含めて行われているのに対して、こちらの本で触れられているのは「為替の話だけ(しかもドル円に集中)」だ。そのあたりも、佐々木氏の方に惹かれる理由である。
たとえば、本書では「アメリカはプラザ合意の後、ドル安を実現することで経済を回復した」ということが、さも成功例のようにサラッと書いてある。しかし、それによって実現された今のアメリカの経済社会が、今後の日本の社会像として見習うべきものなのかという点に全く言及が無い点には、とても疑問を感じた。
為替が専門でないので粗い理解ではあろうけれど、前に紹介した佐々木さんの本と、本書を併せて読んだことは、自分にとってとても良い「投資」だったと思う。