ソーシャルシフト これからの企業にとって一番大切なこと 斉藤徹

ソーシャルシフト―これからの企業にとって一番大切なこと

ソーシャルシフト―これからの企業にとって一番大切なこと



コンサルタントを生業とする者として、示唆に富む内容が多く含まれていた。勉強&雑感用のメモを残す。


企業にとって、ソーシャルメディアでの呟きを分析することは、お客様センターに電話してくる顧客の声の分析、とは全く異なる意味を持つ。これはすなわち「サイレントマジョリティ」の声を知ることであり、経営にとって大きな示唆を得られる可能性を秘めている。


本書に紹介されていた、リチャード・ヴォーン氏による「製品関与マップ」これは面白かった。購買のシーンにおいて、「learn」 「feel」 「buy」の順序がどう異なるか、をマトリクスにしたもの。議論の材料として使えそう。


本書には日本企業によるSNS活用事例が多数出てくるが、そこで主張されるのは「SNS空間での空気を読む能力」「場の雰囲気を理解する」ということである。これには、「結局、テクノロジーが発達しても日本で大事なのは空気読みか…」と何故だか、少し残念に思う気持ちもある。(著者の主張が残念ということではなくて、テクノロジー発達の末に江戸時代に戻るのか、というような意味で)


ただし、これは「日本的ソーシャルメディアの未来」という本にも書かれていたように、ソーシャルメディアはあくまで社会を映し出す鏡に過ぎない、ということの証左だろう。また、別の情報源によると、海外のSNSでも空気読みは大事らしいので、これは国の文化特性というよりも、SNS特性なのかもしれない。


P285

今まで企業が優遇してきた人材は「売上利益を獲得できる人」「専門知識や技術を持っている人」だった。これからはそれに「自然な振る舞いで共感を集められる人」が加わるだろう。


確かに時代の流れとしては分かる。Facebookなんかを見ていても「自然な振る舞いで共感を集められる人」というのが大事になって来ていることを感じる。橋下徹氏なんかも、この三番目に該当するのかもしれない、と思ったり。ただ、本田由紀先生か聞いたら失望&怒りだしそうだな〜とは思うし、それはあくまでネット上での事であって、現実の生身で「自然な振る舞いで共感を集められる人」というのはまた別だよな、と思ったりもする。



ソーシャルメディアの発達は、企業に「表裏」の存在(と都合の良い使い分け)を許さなくなる、との主張は、今のワタミの状況*1などを見ていると確かに、そうなのだろうと思う。ただし、著者も指摘しているように、全てが透明・一体になるのではなく、隠される部分も残る。その線引きを時代の要請に併せて変えていけることが大事なのだろう。



SNS時代に求められるリーダーシップについても色々書かれていた。これは別の本「オープンリーダーシップ」も読んでからまとめたい。

*1:Twitterで勤務実態を暴こう、という運動が行われている