マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙




イギリス史上初の女性首相で、その強硬な性格と政治方針から「鉄の女」と呼ばれたマーガレット・サッチャーの半生をメリル・ストリープ主演で描いたドラマ。父の影響で政治家を志すようになったマーガレットは1975年、50歳で保守党党首に選出され、79年にはイギリス初の女性首相となった。国を変えるため男社内の中で奮闘するマーガレットは「鉄の女」と呼ばれるようになるが、そんな彼女にも妻や母としての顔があり、知られざる孤独と苦悩があった。マーガレットを支えた夫デニス役にジム・ブロードベント。監督は「マンマ・ミーア!」のフィリダ・ロイド。第84回アカデミー賞ではストリープが主演女優賞を受賞。ストリープは史上最多17回目のノミネートにして、「クレイマー、クレイマー」(79)、「ソフィーの選択」(82)に続く3つ目のオスカー像を手にした。


映画館では公開終了が近いけれど、終了間際に見て来た。巷間言われる*1ように、メリル・ストリープの神演技が凄い、というのは確かにそうだったが、それ以上に、総合的に作品として面白い部分が多かったと思う。ただし、見る側に、ニュースショー程度で良いから英国現代史の素養がある*2ことは前提になっている。


リーダーの成長物語であり、痴呆老人の切なさの話であり、夫婦・親子関係を描いた作品でもある。このような多面的な意味を持つ良作であると思うが、尺もあまり長く無くコンパクトにまとめているため、どれもやや掘り下げ不足と感じられるのも事実。


とはいえ、個人的には、この映画は「近代統治機構の長を極めた人間も、一個人としてはとてもか弱い存在に過ぎない」というところに主眼があるのかなと感じて、そういう目で見て、とてもよく描けていると思った。


名言ぽいセリフが光る作品でもあった。


「私なんか若い女だし、絶対に党首なんて無理、でも保守党の皆に党の理念を再認識させたい。そのためフロックでも良いから党首選に出馬する」と言ったサッチャーに対して、同僚議員が、「もし党を変えたければ、党首になりなさい。もし国を変えたければ、首相になりなさい」と言うところ*3とか、惚けた老サッチャーが突然醒めて「最近は、何かというと気分(感じる事 feel)を大事にすることばかり。本当に大事なのは、考えること(think)」と若者にビシっと言うところとか。

あとは、やっぱり「プリンシプル」を大事にする政治家、というものを考えさせられるところは多かった。爆弾テロをやられようが、実子の世話ができなかろうが、デモ隊に身の危険を感じるくらいにディスられようが「信念を変えずに突き進む」というのは何が原動力なのか。映画ではあまり深くは描かれていない(強いて言えばお父様の影響くらいしか)が、考えさせられる部分であった。


最後に、エンドロールに入る前のところがお洒落で良かった。



「月一本、劇場で映画を」の目標は、この後「アーティスト」「ファミリー・ツリー」そして「ダークナイト・ライジング」の予定。

*1:言われる、というか本作でアカデミー主演女優賞受賞しましたね。

*2:IRAって何?フォークランド紛争って何?という解説などは一切ない。

*3:字にすると、今ひとつだが、映画の流れの中でみるとアガるシーンです。