社長は労働法をこう使え!/向井蘭


社長は労働法をこう使え!

社長は労働法をこう使え!


経営側で労働問題を扱う弁護士さんの著作。業界内では結構話題の一冊ではないか、と思う。本書の内容に「多少、煽り気味では?」との指摘もあるよう*1だが、なかなか他の人が書かない表現、たとえば「サービス業は労働者の善意で成り立っている。法律通りにまともに残業代払ったら倒産する企業ばかり」「退職勧奨をすること自体は法律上は全く悪くない」など、実務家・専門家なら知っていることがはっきり書かれている。


一般ビジネスマンが読む本かというと微妙だが、経営について知識を深めたいという意欲のある方であれば、人事担当でなくても読んでしかるべきであり、ビジネススクールなんかで重視される「モチベーション」というような事よりも、実は重要なことが書かれている気がする。


以下、あまり、本書には関係ないですが。


「人事」と言っても、「労務屋」と「人材開発」では壁がある、と、時々指摘されることがある。「給与を扱い、ダークサイドと向き合い、時にはモンスター社員と戦う。一歩間違えば裁判までは行かないまでも労働争議」のお仕事、と「基本的には人間の善意と成長を信じ、前向きにできる」お仕事では、それは壁が出来てしまうわな・・・と思いました。自分は一応両方担当しているコンサルタント(割と珍しい存在ではないか思う)なんで、この種族の違いが気になるのです。

*1:日本の労働社会をもう少し冷静に俯瞰的にとらえるには、hamachan先生の著作を併せて読む必要があるだろう