近代日本の陽明学/小島毅


近代日本の陽明学 (講談社選書メチエ)

近代日本の陽明学 (講談社選書メチエ)


「中国化する日本」を読んで、その流れで本書を手に取る。


小島先生の本は「歴史を動かす」「父が子に語る日本史」など読んできて、とても素晴らしい先生だと思ってきたが、これも良かった。




陽明学という儒学の一つの流れを取り上げ、それが日本にどのような影響を与えたか、を論じている。

全体が5章からなっている。まえがきから前半の3章はかなり面白く読めた。後半の2章は、ちょっと良く分からなかった、というか先生の思い入れが強く出ているのと、自分の基礎知識の足りなさか。




いずれにしろ、この本は、人事コンサルタントである自分的にも、色々思考の材料を与えてくれた。




というのは・・・


陽明学というのは成果や合理性、フレームを問う、ということよりも、「善意」「動機が純粋か」ということを重視する思想である。(この思想が、水戸学と結びついて、明治維新の原動力にもなったし、昭和の陸軍を戦争に突き進ませたものだし、戦後の左翼運動の原動力にもなったのではないだろうか。)


戦後日本の人事管理も、ともすると、成果や合理性よりも、「一生懸命やっているか」ということを重視しがちな傾向がある。(太田肇先生流に言えば、「仕事の上流ばかりを評価する」ということだし、山岸俊男先生風にいえば「心でっかちの日本人」ということになるのではないか、と僕は思う)


この傾向の根っこの一つが、「陽明学」的思想ではないか、と思うのだ。

そんな事を考えながら読んだ。なお、割と本格的な日本思想史の本なので、素人の方にはお勧めしません。