沈黙の街で/奥田英朗

この一年ほど、朝日新聞の朝刊に連載されていた小説が、7月12日で終わった。


僕は著者の奥田英朗氏の大ファンなので、初回から楽しみに読んできて最後まで完走できたのだが、途中、正直「話が前に進まないぞ。迷走していないか?」と思うことは多かった。大ファンの自分ですらそう思ったので、新聞連載小説として多くの読者を獲得できていたのかには疑問もある。


しかし、連載が佳境に差し掛かったここ1カ月ほど、滋賀でのいじめ自殺事件が社会的にクローズアップされ、それがまたこの小説の主題とリアルに凄く重なっていて不気味なほどだった。このあたりが、奥田英朗氏の凄さ、実力なのだろうか。



最終回、ある意味では奥田氏らしい幕切れ、というか、ブン投げ、というか、話は宙に投げ出される形で終わった印象がある。



「現実の世の中のことは、オチなんかつかず、全て宙に投げ出されている。それを小説でやったまで」なのかもしれない。


単行本化されたら、再読してみようと思う。