気分はまだ江戸時代/与那覇潤・池田信夫


http://agora-web.jp/archives/1468141.html


私の本業は、日本人と日本人が構成する組織と向き合うことなので、「その特性」みたいな議論は、10年以上追いかけ続けたテーマなのですが、最近登場した論客?与那覇先生の議論は、とても面白いと思っています。

「中国化する日本」のスピンアウト企画のようなこの電子書籍(210円)を購入して読みました。
(アゴラブックス、初めて購入)


以下、私の心に響いたところの引用です。

P32

(池田氏)
日本がなぜそうなるかって、やはり基本的に土地が狭いということですね。良く言われる日本の会社効率悪いとか、みんな働き過ぎだって言うでしょ。でも土地の利用効率というのを世界で比べると、日本は圧倒的に高い。一平米あたりの付加価値額ってもう群を抜いて高いんですね。
(略)
日本人にとっては土地が希少資源で人間は余っていたので、徹底的に人間を消費する文化がある時期まではあったわけです。
(略)人間を有効に使うためには、その人が一番労働生産性の高いところに動けるようにしなきゃいけないんだけど、残念ながら日本人の頭には勤勉革命が刷り込まれている。一所懸命という言葉に表れているように、一つの所に死ぬまでずっといて、そこでスキルを蓄積して長時間労働するという労働倫理が刷り込まれちゃっている。

P33
(与那覇氏)

あくまでも「与えられたフレーム」の中でベストを尽くして、ひたすら努力しようとすることで問題を解決しようとするのが、典型的な日本人の行動様式。

だから「この会社の労働条件、どうなの?」と思っても、よそに移ることを考えるんじゃなくて、もっともっとこの条件の下で自分が精進研鑽して、頑張り抜けばやがて希望が見えるはずなんだと思って頑張ってしまう。これが江戸時代の勤勉革命からワタミ事件に至るまでの、日本人の労働エートスなわけですね。


P36
(池田氏)
日本人がグローバル化に遅れる原因はいろいろあると思うんですけど、一つは現場の自律性が強すぎる。それは今までの話から言えることですね。つまり日本人は狭いコミュニティの連合体として長い間やってきたものだから(略) 役所だって、局あって省なしと言われるくらい現場の自律性が強すぎてトップダウンで決められない。みんなボトムアップで上がってきて、稟議書を回して、役員会では本部長同士の話し合いで決めるから、事業を売却するとか買収するとか、とういうのが全然できない。


P38
(与那覇氏)
言い方を変えると、しばしば日本人が大好きな褒め言葉として「現場力が高い」というのがありますね。(略)しかし、そういう「日本人の長所」は、常にコイン の裏表のような「短所」とセットになっているんだ、というのが私の本で伝えたかったメッセージなんです。



P 40
(与那覇氏)つまり江戸時代以来、日本人のアイデンティティというのは、自分が社会的に与えられてきた「職分」を果たすことに置かれてきた。職務遂行こそが、その人の社会における存在意義を保障してきたわけですね。

(略)

ここで恐ろしいのは、もちろん職業にアイデンティティを感じること自体は、ヨーロッパ人にも中国人にも多分あるのだろうとおもうのですが、日本の場合は、それが単なる「職務」のみではなく「身分化」されているということなわけです。

ごめんなさい。

沢山引用してしまいました。面白い対談なので、興味のある方は、ぜひ購入してお持ちください。

これで210円。ドトールコーヒー一杯分。レッドブルとかモンスターエナジーとも同じ。

仕事に付加価値つけようと考える知的ホワイトカラーなら、これらを飲んで頑張っている気分になるよりも、一回で良いから我慢してこれを読むべき!と最後「ベキ論」でしめさせていただきます。