世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち/マイケル・ルイス

世紀の空売り

世紀の空売り


今年の夏は、ノンフィクション作家、マイケル・ルイスの著作数冊を読破しようと決めて買い込んだ。

その中で、圧倒的な面白さだったのが本書。



サブプライムが崩壊する前、GSやモルスタなど大手投資銀行が先導して熱狂していた頃に、金融界の辺境でその状況が虚飾だと見抜き、「市場の崩壊」に賭けていた(文字通り「賭けていた」)人々が居た。その人々の人物像と当時の行動に焦点を当てたノンフィクションが本書である。

誰も読まない分厚い契約書を全て読破したアスペルガー症候群気味の医師、や、金融界に身を置きながらその存在を悪と憎む弁護士など、事実は小説より奇なりである。




バブルの最中に「今はバブル」と指摘するのは簡単で、難しいのはそれがいつ崩壊するかを当てることだ、とよく言われる。(本書内にもそうした記述あり)。バブルの後に「あれはバブルだった」というのは言うまでも無く誰でも出来ることだ。

今、日本の民生用電機業界が崩壊の危機にある。マスコミでもネット記事でも「後付けの講釈」と思しきものも結構多く、寂しく思っていた。

そんな時、バブルの渦中でも、ロジックと観察眼で敢然と「今はバブルであり、もうじき崩壊する」、と、異端と言われようとも行動した人々の本を読んで、考えさせられることが多かった。