ディクテーター 身元不明でニューヨーク/サシャ・バロン・コーエン

只今公開中。




ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」「ブルーノ」のサシャ・バロン・コーエンが、今度は世界一危険な独裁者アラジーンに扮する。ニューヨークで身元不明人になってしまったアラジーンが巻き起こす騒動を描くコメディ。国連サミットに出席するためニューヨークを訪れたワディア共和国のアラジーン将軍は、何者かに拉致され、トレードマークの髭を剃られてしまう。スーパーの店員となって潜伏し、反撃の機会を待つアラジーンだったが、国連サミットに偽者が出席し、ワディヤを自由の国にすると宣言する。アラジーンは自らの独裁者生活を守るため立ち上がるが……。監督は「ボラット」「ブルーノ」に続きラリー・チャールズ

冒頭から「キム・ジョンイルに捧ぐ」のクレジットで爆笑。



それにしても、人種差別・性差別・障害者差別・下ネタのオンパレード。
(実際、この映画を国として上映禁止にしているところが少なからずあるらしい)
でも、これはあくまで「映画」だから、彼の出世作「ボラット」とか「ブルーノ」よりもラクに笑える。これらはモキュメンタリーの形式だったので、無辜の市民を巻き込む点に少し心が痛んだのだ。



それにしても、バロン・コーエンは、こんな差別ネタ満載の映画を作って、何がしたいのか。暗殺対象になるリスクを背負いたいだけの無謀な行為にも思える。学もある人みたいだし、そのリスクを超える何かを求めているのではないか、と思う。単に差別したいだけだったら、こんな映画を作るはずがない。

今週は、ムハンマドを冒とくしたというショートフィルムが原因で、リビアのアメリカ大使が殺された。冷静に振り返ってみると、この映画はタブーなき全方位攻撃をしているように見えつつも、そのレベルの地雷は爆発させないように周到に避けているようにも思えた。凄い綱渡りをやってのけているのかもしれない。単なるバカが向う見ずに作っている、というのではない。



あと、以下の三つの点に言及しておきたい。


エドワード・ノートンの登場にはとても笑った。まさか、そういう風に…。

・劇中に流れる、大好きな曲、R.E.M.のEverybody Hurtsアラビア語バージョンが最高。

・神映画である「ダークナイト」の冒頭シーンのパロディまであった。素晴らしい。




バロン・コーエンがクイーンのフレディ・マーキュリーの映画に出る、という噂もある。これも楽しみ。


それにしても、映画館がガラガラだった。万人ウケする映画ではないけど、日本人も、もう少し見に行ってあげて欲しい。