ブラック企業 日本を喰いつぶす妖怪/今野晴貴


ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)


自分は経営者側・人事部側に奉仕することをなりわいとする人間だ。幸い「ブラック企業」の直接的手伝いはしていないと思う。だから言うわけではないけれど、自分も「ブラック企業」が日本にはびこる事には反対だ。


本書前半に描かれた若者を壊すブラック企業の事例はナマナマしく心が痛む。(余談ながら、事例となっている某ファッションSPA企業については実名描写を避けており、同社の訴訟攻撃が相当怖い、という事は良く分かった。)



提言される処方箋の中で、学校教育の「生活科」で労働法教育を、というところにも賛成。


ただし、現実問題として、採用してから発覚する雇用のミスマッチというのは必ず起こってしまうことなのだが、そのことにはあまり言及せず「こんなひどい追い出しがある!」という主張に傾斜している感もある。「陰湿ないじめのような追い出しをせざるを得ないことと、正社員の合法的雇いどめルールの不整備の関係」のあたりにも言及があっても良いと思った。(なんとなく、一度雇ったらとにかくずっと責任持てよ!という論のようにも読める)

また、ブラック労働の温床となっている、「そもそもまじめに法を守ったらサービス業の大半は赤字で事業継続できない(僕が読んだ別の本で労働法弁護士が言っていたこと)」といわれる構造問題に触れてくれたら良かった気もする。



少し注文をつけてしまったが、自分もブラック企業には反対であり、そのことを訴えるのは意義があることだと思う。