007 スカイフォール




007の最新作。イギリスでは『アバター』を抜いて、史上最高の興業収入になっているらしい。



ストーリーは、正直デタラメに近い。


それでも「ストーリーの強引さは別にいいや、許す」という気持ちにさせてくれるのは「007ってそういうもんだよね」と思わせる伝統の力、役者の演技力、美しい映像の力、金のかかった演出等々…この映画の総合力のなせる技だろう。


50周年記念作の本作は、「古いブランドを、伝統を残しつつ野暮ったくならないようにスタイリッシュにモダンに蘇らせるっていうのはこういうことだよ」というお手本のような作品だった。(この映画のコスチュームデザイナー、トム・フォードが昔グッチでやったことが念頭にある)



多くの人が指摘するだろうが、色んな点で、クリストファー・ノーランの「ダークナイト」の影響が垣間見える。改めて「ダークナイト」が傑出した作品であることを再確認する機会にもなった。



主題歌が素晴らしい


本作のメインテーマ、イギリス演歌ともいうべき、アデルのSkyfallが素晴らしい。こうなると、映画館からの帰りの電車内で手元のiPhoneから250円のボタンをクリックしてダウンロード購入してしまう。(これが今の音楽購買行動)。翌日、一日中リピートしてしまった。



趣味の宗教的小話(若干ネタバレ)


途中、敵とボンドとの会話で、


James Bond: Everyone needs a hobby...
Raoul Silva: So what's yours?
James Bond: Resurrection.(復活)


という部分がある。

これは、映画前半部分の「死んだと思ったジェームズ・ボンドが実は生きてた」というストーリーについて、ボンドが自らジョークとして言っていると理解するのが自然だが、実は後半にも繋がりがあるセリフとなっている。


終盤のスコットランドでの戦いにおいて、老人が、子供のころに両親を失ったボンドが「彼は二日間穴ぐらに籠った。そして出てきたときには大人になっていた」と語ったが、これは聖書に描写されているキリストの死と復活(三日目に復活した)をなぞっているものと思われる。


以上、この作品のキーワード「Resurrection」についてのうんちくでした。


その他


町山さん情報のお陰で予習として『ゴールドフィンガー』を見てから行って、それはとても良かったが、まあ予習なしでも楽しめる映画。自分は決して007に詳しくは無いが、詳しい人がみたら色々気づく仕掛けが多いのだろうと思う。



6代目ボンド役のダニエル・クレイグ、二枚目とは言えないが、愁いのある表情、トム・フォードのスーツがはまる肉体、カッコ良かった。というか、ダニエル・クレイグ「仁王立ち」シーンが「無駄に」沢山あって、途中から軽く笑ってしまうくらい。でも良いんです。かっこいいから。


この悪役、どっかで観たな、と思ってたら、『ノーカントリー』のシガーじゃないですか!。シガーの方が断然怖かったけど。