「レ・ミゼラブル」百六景〈新装版〉 (文春文庫)/鹿島茂


「レ・ミゼラブル」百六景 (文春文庫)

「レ・ミゼラブル」百六景 (文春文庫)



意を決して映画『レ・ミゼラブル』に足を運んだキッカケの一つは、鹿島先生のこのブログを読んだからであり、やはりこの本を読んでみたくなった。

ユゴーの大長編小説「レ・ミレラブル」を、前から順番に「ストーリーの要約+解説+挿絵」というモジュールを106個で示してくれるという本。内容も面白いし、鹿島先生の美文も最高。少し文庫としては厚いけど絵が多いので問題なし。


私のように「子供のころ、ダイジェストで読んであらすじがうろ覚え」「かつて一度だけ全量にチャレンジしてあまりの冗長さに挫折」「映画を見て、感動」といった人間にはもってこいの本だった。

レ・ミゼラブルが批評家や玄人からの批判や無視にもかかわらず、これほどまでに世界の人々に親しまれてきたのは、やはり社会の弱者に対するユゴーの愛と共感が本物で、そこにひとかけらの卑しさもないためだろう。いくら感動的な物語でも、偽物は時代を超えて生き延びることはできない。

(第31景 軽くなった桶*1 解説より)

*1:ジャン・バルジャンが森の中でコゼットを最初に助けるシーン、のことで、鹿島先生によればこのシーンが「全編中で最も感動的」であるそうである。私も同感。