[読書]おどろきの中国/橋爪大三郎・大澤真幸・宮台真司

おどろきの中国 (講談社現代新書)

おどろきの中国 (講談社現代新書)


この三名の存在がある程度わかっている者*1にすれば、この三名が中国について語る、というと、期待と不安が入り混じった気持ちになるのではないだろうか。僕もその一人。早速購入して非常に楽しく読ませてもらった。

対談、というとなんとなく平易というイメージがあるし、大澤先生が「初心者的な聞き手」を演じてくださっているとはいえ、本書のレベルは理解が簡単なものではない。

会話自体が、社会科学の思考法*2の基礎や日本や中国の歴史*3について一定の基礎知識があることが前提になっている。

自分は、素人なりに何冊かその辺*4を読んできたし、何より橋爪先生とはセミナー等で何度も接点があるので、なんとかついていけた、という感じである。とはいえ、本書はもう一度丁寧に読みたいと思っている。

それにしても、本書のような大きな風呂敷を広げれば、中国人、中国・中国史専門の研究者、ネトウヨの皆さんからおそらく色々突っ込まれるだろう。でも、そんなの織り込み済みでこれだけの風呂敷を広げてくれたことに僕は感謝したい。これは著者の使命感なんだと思う。これから色々話題になって(現時点で10万部超え?)「ふしぎなキリスト教」に続く新書大賞も狙えるのではないか。

なお、第二部の毛沢東文化大革命談義がつらい*5人は飛ばして、第三部に進み、将来志向が展開される第四部はぜひ読まれることをオススメしたい。

本書は中国論であると同時に、日本論にもなっていたことも付記しておきたい。

*1:あの、宮台真司先生が、後輩的なスタンスで素直に教えを請うてるところがなんともびっくり。小室先生門下の流れとは理解していてもこうして活字で見ると。

*2:ホッブスリヴァイアサンの概念あたりがおぼろげでも分かっているくらいのレベルがないと読んでてしんどいと思う。

*3:毛沢東文化大革命って何だったっけ?というレベルだとしんどい。

*4:ワイルド・スワン、毛沢東秘録、訒小平秘録、チャイナ・ナインなど長年の読書経験が活きた。あと最近の昭和陸軍研究も活きた。

*5:中国人と権力という中核的な論点ではあるのだろうけれど、かなり難解な部分がある