メルトダウン/大鹿靖明

メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故 (講談社文庫)

メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故 (講談社文庫)


まさに震災のころからかもしれないが、ツイッターとかSNSのタイムラインで断片的な情報を読むことが増えた。それも面白いことなのだが、本書のように繋ぎあわせて一つのストーリーとして読むことは非常に大事だし、これだけ巨大な事案をそうしたストーリーに構成出来る著者は素晴らしいと思う。

圧巻なのはやはり第一部だ。地震発生から原発が次々爆発していく様とその対応を克明に記録している。文庫版はあとから出てきた最新の情報に基づいているとのことで様々なトリビア的な事実も含めて時系列に展開されるこの第一部の緊迫感、絶望感は特筆に値する。読んでいての疲労感がハンパでなかった。

著者は、東電経済産業省に対して厳しいスタンスだ。両者にも両者の言い分があるのだろうし、本書の内容が全て100%の真実とは思わない。しかしそれでもやはり「責任の取り方」という点において、この原発災害に見合うものが役所にも、政治家にも、東電にもなかった、(マスコミにも・・)ということについては著者の見方には十分に共感できる。日本を原発にみたてれば、炉心にある棒は(皆が知る前に)既に溶融(メルトダウン)していた、と言う著者の主張は寂しいながらも頷かざるを得ない。

これは私が勝手に考えることだが、この日本の(個々は真面目な働きぶりに対して)エリート層の無責任体質、危機管理対応の欠如、全て敗戦時に端を発しているのかもしれない。

著者は本書で、現地の被害者の悲惨な状況を敢えて描いていない。それを入れたらお涙頂戴になることを避けたのだろうか。


とても力作&学びの多い本で、お勧めです。