風立ちぬ/宮崎駿監督(2013)



飛行機・美少女・妄想・仕事中毒…宮崎駿監督の感性全開の作品だった。

子ども向けでは全くなく、大人向け、そして特に、男性向けだと思う。


以下、ネタバレあり。






正直126分中、最初から110分くらいまでは、「この映画、なんか二つの話を無理やり繋げていて(予めそうだと説明されてはいるものの)それぞれが融和してないなぁ」という印象だったのだが、そこは巨匠。最後の15分くらいで「さすがにまとめて来たな」という展開を見せてくれた。


あれだけワガママに生きてきて、妻の病床の脇でもタバコを吸いながら仕事して、でも最後には(美しい)女性から「生きて*1」と言ってもらうのが、ある種の男子*2にとって最高のカタルシスなのだと思う。これがまさに宮崎駿イズムであり、彼の業(ごう)であり、それを表現したのがこの映画である。そこに特に反省が無いのがまた良い。だから、女性から見たら「何なのコレ!」となる可能性は高いのではないかと思う。
と、少し皮肉ってしまった感もあるものの、自分の中にも、このカタルシスが分からないではない自分も居るのも事実なので、それなりに感銘を受けたのでした。


主役の声については、自分は特に気にならなかったし、むしろ、これを庵野さんにしてしまうところこそが、宮崎駿の常人ならざるゆえんであり、非難する気には全くならない。それから、宮崎監督入魂の理想像である奈緒子はやっぱり可愛い。「カリオストロ」のクラリスが完成していた。

*1:あそこで、奈緒子から「お前ふざけんな!」とは絶対に言われない、のが村上春樹作品とか宮崎駿作品の特徴。そしてこれが日本では圧倒的に支持される。

*2:村上春樹作品に通じるものもある。彼の大半の作品と同様に、本映画でも「父」が見事に出てこない。女性は何故か主人公に優しくしてくれる。これが男の夢なのか。