そして父になる/2013年 是枝裕和監督



僕も今5歳と2歳の子の親であるので、この映画のあらすじを聞いた時から(そして海外でも高い評価を得たとも聞き)興味を持っていた。一方でこの監督には「妥協なき人」というイメージもあったので、なんとなく見るのが恐ろしくもあった。(どんだけ感情を揺さぶられるのだろう・・・という危惧)

しかし、結論からいうと見て恐ろしいような映画ではなかった。是枝監督は、本作でも脚本・編集も併せて手掛けているが、肝心なところ、というか他の監督ならこれ見よがしに観客の感情を揺さぶるために使うような場面を敢えて見せずにテンポ良く先に進む。好みが分かれるところだろうが、個人的には嫌いじゃない*1。また、少しカリカチュアし過ぎなくらいに、今の都会と地方の差を描いているが、ギリギリ嫌みな描き方にならないバランス感が巧みであった。

ストーリーについては、子育て中ということで身につまされるかと思いきや、意外にそうでもなかった。最後の部分は、(多面的に解釈できる終わり方だが)うまい作りだと思う。一つの家族像を提示することを避け、見る側の想像力に委ねた、と、自分は理解した。


主演の福山、役柄に感情移入できなかった*2が、エリートサラリーマン役、スーツが映えますな。あと、リリー・フランキーが前から役者としても評価が高いとは知ってたけど、改めて凄いですね。プロの役者も肩無しの良い存在感でありました。


おまけ

劇中、バッハのピアノ曲が印象的に使われていたけど、エンディングロールのところでは、唸り声が聞こえた気がして「グールドか?」と思ったらやっぱりグールドの演奏でしたね。グールドの「唸り弾き」を知らない隣の席のおばちゃんが、怪訝な顔してキョロキョロしてました…。僕が唸ってたんじゃありません・・・。

*1:この夏は、ハバネロたっぷりの料理のような「半沢直樹」や調味料や隠し味が複雑な「あまちゃん」を見てたせいか、この薄味な演出がまた上品に感じて良い

*2:ここに感情移入する人だと、かなり泣ける作品になるのだろう。