熔ける　大王製紙前会長　井川意高の懺悔録／井川意高

カジノに入れ込み、注ぎ込んだカネの総額106億8000万円。
一部上場企業・大王製紙創業家に生まれ、会長の職にありながら、
なぜ男は子会社から莫大な資金を借り入れ、カネの沼にはまり込んだのか。
その代償として、塀の中に堕ちた男の懺悔がここに――。

全体的に、不思議に乾いたというか浮遊したという感じの述懐。

読みながら、著者の腹の底が見えてこない感覚を拭えなかった。

マカオのカジノビジネスの仕組みや六本木の交友はこの人ならでは語れるレア情報だし、「抽象論を排して具体的に詰める」ビジネススタイルも面白いのだが、何か乾いている。

終章の最後が印象的だ。

自分の犯したあまりにも愚かな罪から、誰かに何かを伝える程のものは何もない。本書を手にとってくださった方には、一人の愚かな男の転落気として読んでいただければ充分だ。
一番信用できないのは、自分−−−106億8000万円の代償として私が得たのは、かくも悲しい事実のみだった。

余談ながら、ノンフィクション作家、佐野眞一への具体的な罵詈雑言は面白かった。私も佐野氏の本は沢山読んでそれなりに楽しんできたのだが、これが実態なのだろう。