王国/中村文則


王国

王国

組織によって選ばれた、利用価値のある社会的要人の弱みを人工的に作ること、それが鹿島ユリカの「仕事」だった。ある日、彼女は駅の人ごみの中で見知らぬ男から突然、忠告を受ける。「あの男に関わらない方がいい…何というか、化物なんだ」男の名は、木崎―某施設の施設長を名乗る男。不意に鳴り響く部屋の電話、受話器の中から静かに語りかける男の声。「世界はこれから面白くなる。…あなたを派遣した組織の人間に、そう伝えておくがいい…そのホテルから、無事に出られればの話だが」圧倒的に美しく輝く強力な「黒」がユリカを照らした時、彼女の逃亡劇は始まった。


今年、この著者の「掏摸(スリ)」という小説に出会ってとてもそれが良かったので、「掏摸(スリ)」の続編、姉妹編という位置づけの本作も年内に読んでみようと。

ところが、本作には全然自分は乗れなかった。

トーンやモチーフは似ている気がするのだが、小説の妙味とはかくも微妙なバランスの上に成立しているものなのか、と、その点で勉強になった。

(もう一回、「掏摸」を読み直してみようか。)