雨ン中の、らくだ/立川志らく

 

雨ン中の、らくだ (新潮文庫)

雨ン中の、らくだ (新潮文庫)

 

 

立川談志師匠の弟子である立川志らく師匠による、ご自身の青春記であり談志論。

 

同じ位置づけの書に、兄弟弟子である談春師匠が書いた「赤めだか」という先行する大傑作があり、本書はそれに触発されて書かれたことが明白である。(というか、本書にはっきりそう書いてある)

 

私は、(落語はそれほど聞いていないが)談志ファンなので、自然、本書も楽しく読むことができた。著者独特のグルーブ感を持った文体も気にならなかったし、著者独特の個性もあまり嫌みは感じなかった。

 

一つ印象的だったところを挙げる。芸人には、その会その会の観客に迎合するタイプ(今日の客は難しいのは分からないだろうから、簡単にしとこ、というヤツ)、と、そうでないタイプがある。談志は後者で、観客に迎合することなくどこであっても、本人が現在進行形で「面白い」と思っている先端の内容をぶつけていた。その信念はぶれることがなかった、というくだり。これ、大学の教員、あるいはコンサルタントなどでも同じ分類がありえる。私はどちらだろうか。

 

ただ、ごめんなさい、志らく師匠。

やっぱりどちらかを選べ、と言われたら談春師匠の『赤めだか』です。『赤めだか』は「師弟論」「プロ論」として卓越しています。(しかし、この本、文庫になりませんね。まだハードカバーで稼げるほど売れているということでしょうか…)

 

赤めだか

赤めだか