一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 (集英社新書)/内田樹・中田考
一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 (集英社新書)
- 作者: 内田樹,中田考
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/02/14
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (18件) を見る
「自分はもう、内田樹本*1は卒業か…」と勝手に思っていたのだが、この本で対談している中田考先生の存在を知って本書読んでみたくなった。
中田先生(今の肩書きは一イスラム教徒)。イスラム国に飛ぼうとした日本人学生を手引きした黒幕、とマスコミで報じられるわ、ツイッターで「カワユイ、カリフ道」を説いてるわ、灘高東大で学者になったのにそこから出奔してフリーになってるわ、とにかく既存の日本社会からは規格外の存在のようで、気になってしまったのだ。
本書、中田先生の展開する、イスラム論、イスラムの実態の部分は非常に面白かった。カリフ制再興を主張する理屈も良くわかった。「ハラール認証は神の大権に対する冒涜だと思う」というあたりは、確かに一神教の原則とすればそうだよなぁ、などと勉強になった。また、中田先生による指摘、「キリスト教は政教分離だと言われているが、西欧は厳密な意味で政教分離をしていない*2。それは世俗と宗教の分離であって、国家と教会の分離ではない」という節には「なるほど、こういう観点はイスラム教徒ならではだよな」と思った。
そもそも、ガチのイスラム教徒の人が書いたものをしっかり読んだのは(自分も色々な本を読んで来た方だが)初めてかもしれない。そういう意味でも良い読書だった。
内田先生は、いつも通り、非常に分かりやすい語り口の中に、数頁に一つ、非常に難解な熟語を混ぜて知性を「ちら見せ」する、内田文体。これ対談だから、あとでそういう風に操作しているのか、本当にこの単語を口頭で話してるのか、そこが気になった。あとは、やはり日本の政権や経済界に対する新自由主義の陰謀論を展開しちゃうところがあって、そこもいつも通りだった。
あと、どうでもいいことですが、対談の中で「だはは」という笑い声が使われてますが、これはプロインタビュアー吉田豪先生の発明がここまで伝播してきたってことでいいんでしょうか。