調理場という戦場−「コート・ドール」斉須政雄の仕事論/斉須政雄

 

調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 (幻冬舎文庫)

調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 (幻冬舎文庫)

 

大志を抱き、二十三歳で単身フランスに渡った著者が、夢に体当たりして掴み取ったものとは?「早くゴールしないほうがいい」「効率のいい生き方をしていると、すり切れていってしまう」。激流のように過ぎゆく日々をくぐり抜けたからこそ出てくる、熱い言葉の数々。料理人にとどまらず、働く全ての人に勇気を与えたロングセラー、待望の文庫化。

 

僕は以前から「良い本というのは多面的な性格を持つ」と思ってきた。本書はまさにそれに該当する。

  • 仕事論・職人論
  • キャリア論・成長論
  • 異文化コミュニケーション論
  • リーダー論・チーム論
  • 経営論

本書は上のような内容を含んでいる。

著者の個性が強く出ており、ハングリー精神を前に出している内容であるので、万人向けではないと思う。だが、自分にとっては読むに値する本だった。

 

本書には以下のような名言があと5倍くらい含まれている。気になる方はぜひ。

 

思い出してみると、信頼関係は必ず「いさかい」を通して深まっていったような気がします。まずは出会いがしらに「いさかい」が起きる。その中で絆を深める。そういうことをやっているから、後々に多少の起伏があっても、人間関係や信頼性に対してブレが出ることはないですね。  きれいごとだけでは信頼関係に至れないのです。

 

フランスは基本的には大人の国だから、実力がなかったらだめだというシンプルなよさがあります。実力がなければ世間一般の地位や報酬はないということです。甘くないし結果と評価が比例している…。フランスのその厳しい実力主義は、とてもあたたかく見えました。あとは一生懸命に頑張ればいいだけだから。ぼくがいつも見つめていたフランスは、そういう姿なのです。ハングリーな部分は、今でも絶対に必要だと考えています。
 
 
「その考えは違う」 「その仕事のやり方は、どうしても許せない」そう思ったら、言うべきです。 権力を見せつけるためではなく、本気でいいものを作りたいから追いつめるのです。小競り合いというのは日常茶飯事であっていいものだと思う。みんないい子になっていて、「それは違うよ!」とも言えないような職場では、淀んだ空気が温存されてしまう。隣にいる人が何を考えているかもわからない。
 
 
「資本がないから事業が思わしくないという声をよく聞くが、それは資本がないからではなく、アイデアがないからである。よいアイデアには国境がなく、よい製品には国境がない。どの時代にも残るのは、独自の技術と製品だけだ。そして、うまくいっていない会社には、何よりも新規の開発や開拓がない」これは本田宗一郎さんが著書に書かれていたこと
 
 
思惑を超えたことをやる人って、何か「静か」ですよね?さわやかで健やかで人知れず生きてて、だけどやるぞという時にはぶっちぎる。ふつうにしているけどやる時はやるというのが、すごい人なんじゃないかなぁと感じます。
 
 
「これは、夢のような幸運だ」と思っているうちは、その幸運を享受できるだけの力がまだ本人に備わっていない頃だと思うんですよ。幸運が転がってきた時に「あぁ、来た」と平常心で拾える時には、その幸運を掴める程度の実力が宿っていると言えるのではないでしょうか。

 

本書の成立には糸井重里さんが関与しているとのことだ。それもあって、矢沢永吉の「成り上がり」を思い出す内容と編集だった。著者の体験から紡がれる言葉があってこその本書だが、この本をまとめたライターの方(木村俊介)の力も大だと思う。