統計データが語る日本人の大きな誤解/本川裕



国際比較の統計データにもとづき、日本に流布する通説に疑問を投げかける本。非常に面白かった。私の専門である雇用労働分野も多数取り上げられている。


元々、こちらのサイト

http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/

で有名な方。

このサイト、某経済学者の先生から「余計なメディアに接するくらいなら、このサイトをずっと眺めていた方がいいよ」と推奨されて以来、ファンになった。



後書きに非常に印象的な一節があったので自戒を込めて、、、という意味で抜粋しておきたい。


(略)
人間は、特に日本人は何事も改善を図る立場に立ちたがるというある意味のプラス志向からこうした傾向が生じると思われる。

メディアや有識者についても、こうした傾向に過剰対応する報道や言動が中心となるのは、真理追求よりも社会改善を優先する儒学者的に性格が東アジアの知識人には強いからだと思わせるほどである。

しかし、こうした状況の副産物として、人々が自虐的とも言える低い自己評価や希望喪失の状態に陥り、必要以上に精神的に落ち込んで、それ自体で不幸を招くというような負の側面を伴いがちである。

(P310)


この指摘が非常に響いた。大げさにいうと、日本のリベラル知識人がなぜパっとしないのか、という理由の答えのようにも思った。本書のようなデータに基づく淡々とした姿勢をもっと大事にすべきなのかもしれない。