少女は自転車にのって/ハイファ・アル=マンスール監督



岩波ホールで『少女は自転車に乗って』(サウジアラビア映画)。



同国では、宗教的背景もあり、女性は車の運転は禁止。自転車もダメ、となっている。それ以前に女性の人権全般が著しく制限されている状況が映画の背景になっている。

そんな国で「私は、自転車に乗りたい」と突き進む10歳の少女の話。




こういうエキゾチックな国情を描いた作品を見ると、「よその国の伝統なんだから余計な口出さずに放っておけ」とするか、「それはやっぱりイカンだろ」と思うか、受け手の判断は分かれる*1だろう。特にこの監督は比較的冷静に作品づくりをしており、特定の激しい主張は見えない作りになっている。ただ、ここまで厳しい女性「差別*2」を見て、これを「その国の伝統だからいいじゃん」と今の先進国民は肯定できるだろうか、すべきなのか。そして、そもそもこれは「伝統」なのだろうか。




一方、こんな酷い女性差別は日本にはなくて良かった、という風に楽観的には思えない部分もある。表面を超えて深いところへ入れば、日本はサウジとどれほど違うのか、同じなのか。



余談ながら、「ハンナ・アーレント」ではインテリっぽい高齢者で満席だった岩波ホールがこの映画ではガラガラ。それでいいのか日本のインテリ高齢者、だからおかしな方に行くんだよ、、と思った。本当に現場でそう思ったのだが、あとでツイッターを見たら中森明夫さんも同じことを書いていた。

と、色々書いたが、映画としては主人公役の少女&少年の底抜けの爽やかさに最後は気持ちよく泣ける90分ちょっとの娯楽作。

*1:最近、日本では日本のことについて前者の主張をする人々(外国にとやかく言われたくない)が最近増えているようだ。(少なくてもネット上ではそう見える)

*2:あくまで西洋基準目線と分かって使ってますが