仕事に効く「教養」としての世界史/出口治明



元来、僕は出口さんのファンなのでバイアスが掛かっているかもしれないが、やはりこの本は素晴らしい。

本のタイトルは多分に販促的なものと思われ、仕事への即効性などを考えるべき本ではないだろう。仕事を超えた、人生観を養う本だと思う。

参考文献を一つ一つ挙げずに「腹に落ちた」内容だけで書き上げたそうだが、凄いことだ。(私のように記憶力の悪い者には考えられない偉業)


更に、著者が「本を読んで記憶する」だけでなく「自分の頭」で(批判的に)考えている、というところが伝わってくる内容だ。加えて、その語り口が庶民的というか関西弁も交えて親しみやすいというのも素晴らしい。


本書は歴史ビギナーも楽しめるのかもしれないが、ある程度色々な本を読んできた世界史中級者以上の人の方が、より楽しめるのではないかと思う。




各章とも面白いのだが、特に終章「世界史の観点から日本史を考えてみよう」は感動的な内容だった。

日本の社会常識とは、この20年・30年の間の日本の社会で広く共有されてきた主流的な考え方や意見が中心となっているものです。
アメリカに対する見方とか、中国に対する見方とかもそうです。

(略)

例外をスタンダードにしたら世の中を見誤ると思います。

(略)

日本の戦後は特殊な世界であったと、僕は思っています。アメリカとソ連の対立軸に、蒋介石毛沢東が絡み、世界の大きな歴史の流れの中で、幸運の女神が五回くらい連続してウインクしたのが、戦後の日本だったと思うのです。


(本書P328〜330)

僕は自分の子どもたちにこの章を初めとする本書の内容を読んで欲しいので、最初は借りて読んでしまった本書を、改めて購入し、本棚に常備することにした。