意外と会社は合理的 組織にはびこる理不尽のメカニズム/レイ・フィスマン&ティム・サリバン

意外と会社は合理的 組織にはびこる理不尽のメカニズム

意外と会社は合理的 組織にはびこる理不尽のメカニズム


タイトルに文句をつけるつもりはない。むしろ、世間的には内容との乖離がない方かもしれない。ただ、タイトルそのままの印象の本ではない。本書は、「“組織の経済学”の理論をベースとした組織論エッセイ」だと思う。

従って、これは「見方」を提示する本であって、これだけでしっかり理論を勉強できるほどの本ではなく、解決法を提示してくれるわけでもなく、読者の日頃の不満について溜飲を下げるのを手伝ってくれるわけでもない。「評論家」「分析家」向けの本だと感じた。

ただ、エッセイであるから「事例」「エピソード」がとても魅力的で生き生きしている。冒頭の「アメリカン航空のウェブサイト問題」から始まり「軍隊の問題」「サモアの交通ルールの問題」など、この理屈を語るのにとても良い事例を選んだな〜、と感心するものが多かった。おそらく著者がビジネススクールの授業で話している中から産まれたのだろう。(僭越ながら)自分も研修やビジネススクールで話す際には「事例」「エピソード」の活用には腐心しているので、そんなところに目が行った。

簡単で良いので「組織の経済学」の基礎知識がある人にとっては、十分面白く読める読み物としてオススメできます。