独裁力/木谷哲夫
独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門 (ディスカヴァー・レボリューションズ)
- 作者: 木谷哲夫
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2014/04/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者はマッキンゼー出身だが、(多分珍しいことに)学問的バックグラウンドは政治学だそうで、この事がこの本に類書とはちょっと違う面白さを加えている。
本書の中核にある「環境激変期には、権限の集中をしなければ生き残れない」というテーゼは、経営学(組織論)でも良く言われてきたことだ。また、そもそも組織論の元祖はマックス・ウェーバーなわけで、ある意味では「権力」というのは組織論にとって伝統的な議論ではあるのだが、ここまで「トップの権力基盤」にこだわった記述の本は珍しい。加えて、ビジネス事例、歴史的事例を縦横にひいた記述は、(僕のように関心がゼネラルな者にとっては特に)面白かった。特に個人的に興味を持っている「毛沢東」や「中国共産党」を組織分析の事例*1として使っている点は共感?した。あれらは、組織や経営にとっての示唆が非常に大きい。
また、本書で指摘されている「日本の権力の中空構造」については、社会学・歴史学では既に嫌というほど論じられてきている。著者は最終章で「こうした日本の土壌・体質を変えて行くべきだ」というメッセージを発している。しかし、僕は歴史的に分析したものを沢山読んでしまったせいなのか、日本の土壌・体質が変革ができるかという点については、かなり悲観的である。(船橋洋一も本書の木谷さんも批判していた、国会事故調の黒川報告書の立場に近い。)敗北主義なのかもしれないが。
一方で、「「権力」というものをネガティブにとらえ、距離を置く事がかっこいい、としていてはダメだ。これをシビアに分析し、エンジニアリングしなければならない。」という主張には全く同感だ。(本書では言及されていなかったが)日本にこういう空気が蔓延しているのは、戦後の教育の影響もあるのではないかと個人的には睨んでいる。
知的にインスパイアされる部分の多い本だった。