「今か先かの葛藤」 大阪大学 池田教授


日本経済新聞の2014年4月29日から、大阪大学の池田先生の「今か先かの葛藤」という行動経済学の知見を紹介する連載があった。これがすこぶる分かりやすかったし、面白かった。世に溢れる妙な自己啓発精神論本の何倍も説得的である。そこで、自分の勉強のためにポイントをまとめてみた。以下の記述は、池田先生の連載に基づいている。






人間が自分をセルフコントロールするのための意志力は「希少な資源」である。

セルフコントロールとは…嗜好品を我慢したり、苦手なものを勉強したり、今の楽しみを我慢して将来に投資したり、というような事である。

(第4回より抜粋)

意志力という言葉は、日常生活で何となく使い慣れているのですが、実は単なるレトリックではなくて脳科学的な根拠を持つ実体のある能力であることが科学的な実験によって示されています。セルフ・コントロール(自制、自己管理)と自滅選択の問題を読み解くには、意志力のメカニズムを理解しておく必要があります。

 生活上の節制に始まって、仕事や勉強、人間関係の維持、約束や法律の順守に至るまで、セルフ・コントロールが必要な行動には様々なものがあります。意志力はどの仕事にも不可欠な資源であるにもかかわらず、使えばすぐに消耗してしまう、いわば希少資源としての性質を持ちます。

人により意志力のキャパシティには差があることが実験により明らかになっている。

また、年収と意志力の間には相関関係がある(意志力の強いほど高収入である)ことが調査により実証的に明らか*1になっている。

すぐに摩耗してしまう意志力「自制心」を高めるためのポイントは以下の通り。

その1「習慣化」。習慣にしてしまえば、意志力を使わずにある種の行動ができる。ただし、習慣化するまでの過程はフラジャイルである。

その2「動機・夢」を具体的に持つ。これにより、自制心の量が大きくなる。


個人的な所感


本当に「習慣」のパワーは絶大であり重要なのだ。自己啓発本や飲み屋の親父が説くことが、行動経済学でも裏付けられたと言えるのかもしれない。しかし、これを深く納得したところで、自分の悪い習慣をどうやったらやめられるのかは分からない、という現実に、個人的には直面している。(アレもやめたい、これもやめたい…)

会社で言えば、正しい行動が社員の間で「習慣化」されていることには絶大な威力がある、ということなのだろう。そこでSaveできている意志力が他の生産的なことに使えるわけだから。だから「しつけ」の出来ている企業は強い、と言えるのかもしれない。「しつけ」は、4Sだか5Sの一つ足り得る重要なものなのだと思う。


なお、この連載を詳細に展開したのが以下の書籍。これも読んではいたのだが、今回の連載はコンパクトな復習になった。

自滅する選択―先延ばしで後悔しないための新しい経済学

自滅する選択―先延ばしで後悔しないための新しい経済学

*1:実際に阪大が実施した調査結果がグラフで提示されていた。当たり前といえばそれまでだが、数字で見せられるとなかなかショッキングである。ただし、あくまで相関であり因果関係とは言えない、と池田先生も書いている