この国を出よ/大前研一 柳井正

この国を出よ (小学館文庫)

この国を出よ (小学館文庫)


2010年10月発行の本。全体に、アベノミクス前の悲壮感が漂っていた。

大前研一氏。"日本の教育はダメだ。改革しなければならない。さて、教育の顧客は(学生を買ってくれる)企業だ”と語っている。教育の顧客は企業、と言い切ってしまうこの「新自由主義者」状態では内田樹先生などから酷評されても致し方ない(笑)。

でも、“高卒で勤め上げたら、トヨタよりも名古屋市役所の方が生涯年収が高い。グローバル企業よりも、財政破綻寸前の地方自治体の公務員が、ですよ!こんなおかしなことありますか?”、とか、“私の『企業参謀』は名著だから、若者は読みなさい。ちなみに、フィナンシャル・タイムスが選んだ歴史に残るビジネス書50に2冊選ばれているのはドラッカーと私だけです(どうだ参ったか)”など、ところどころ面白い。(注””の中は引用者の意訳です)

柳井正氏。“講演会をすると、お宅は大企業だから恵まれていますよ、などと言われるが、僕が引き継いだのは山口県の小さな紳士服屋であり、まさに過疎と戦いそこから脱出するためにやってきたのが自分の経営だ”と主張している。確かに、柳井氏は既に一度「この国を出て」いるのだろう。ただ最新の2014年のインタビューでは「自分は、社員に対しておしなべて厳しい生き方を画一的に求めすぎた」と反省されていたのを読んだ。今だったらこういう本は書かないだろう。もちろん、本書に書かれていることは柳井氏の本音であり、幹部にはこういう覚悟を今も求めているのだろうけれど。