カラヤンとフルトヴェングラー/中川右介


カラヤンとフルトヴェングラー (幻冬舎新書)

カラヤンとフルトヴェングラー (幻冬舎新書)


「悪の出世学」で中川右介さんの文章のファンになった。僕はクラッシックには詳しくはない。カラヤンのアルバムを4枚、フルトヴェングラーのアルバムに至っては1枚だけ持っている、という程度である。それでも、この方の筆力なら多分本は楽しめるだろうと思って読んだがその通りだった。クラッシックマニアならもっと楽しめるのだろう。

 著者が提示しているのは、歴史という縦糸・人間関係という横糸で物事を見て行くことの楽しみなのだと思う。血統のある競馬であるとか、プロレスであるとか、何でも当てはまることだが、目の前の「その作品」「その試合」だけを点で見るのではなくて、縦横の様々な伏線を含めて味わうこと、これが人生の一つの楽しみだ。僕にとっては、ある意味、題材はなんでも良い*1。今回の本では、それをクラッシックを題材に楽しんだ。本書は、チェリビダッケを含めた三人の人生を縦糸に、ヒトラーゲーリングといった政治家、更には時代を超えて小泉純一郎まで出てくる(でもこれが、不自然じゃない)のには驚いたし、笑った。

 少し、カラヤンフルトヴェングラーのアルバムを手元に増やしてみようかと思う。

*1:更に言ってしまうと、その楽しみのために読んでいると割り切っているので、書かれていることが正確な史実でなくても別に良い。司馬遼太郎の本と同じ。当然、○○史観というような揶揄もあるだろうけれど、それも含めて楽しめれば良い。