私はこうして受付からCEOになった/カーリー・フィオリーナ

私はこうして受付からCEOになった

私はこうして受付からCEOになった

受付からコツコツとキャリアを積み上げ、巨大企業のCEOへ―。アメリカでも、これほどの大企業で女性がCEOに就くことは珍しい。しかし女性であるがゆえに注目を集め、メディアの餌食となっていく。創業家一族の思惑、変化を怖れる取締役陣の裏切り。そんななか彼女は最後まで、会社のため、従業員のためにベストを尽くした。その潔さは、静かな感動を呼び起こしている。

HPでCEOを務めた女性の自伝。本書の存在は知っていたがこれまで手に取る機会がなかった。これが予想以上に面白かった。いわゆる立身出世物語だから、ストーリーに推進力がある。映画を見ているような感じもあった。アメリカの勤勉で平凡な家庭に育った女性が、地味な仕事からスタートし、途中結婚に失敗したりしながらも、企業内の出世の階段を上って行く。

一つ大変興味深かったのは、彼女がビジネスキャリアをスタートした1970年代後半のアメリカは、セクハラがバンバンあった、ということが色んなエピソードとともに書かれていることだ。著者も営業でストリップでの接待を余儀なくされたり、「彼女は我が社のセックスシンボルです」と自社のヒトに紹介されたり、大変だったらしい。今でこそアメリカというと「セクハラに厳しい国」というイメージが強いが、社会は歴史とともに変わるのだなぁ、という感慨を持たざるをえない。(特に、先月、都議会の「セクハラ野次」が話題になったタイミングであるので印象に残った)

それから、いわゆる落下傘経営者としてHPへ移籍する際のエピソードが興味深い。HPの取締役会と指名委員会が候補(そのうちの一人が本書の著者だった)を探して、接触する様子が描かれているが、なんと候補者(CEO候補に!)に「心理テスト」を受けさせるらしい。それに怒って候補から辞退したヒトも居た、と書かれていた。このあたり、善くも悪くも?いかにもアメリカンWAYであるなぁ、と思う。その後HPに落下傘CEOとして入り、その独特の体質に苦労するあたりのエピソードも、企業改革モノとしては興味深いものである。

そもそも私が「企業経営者自伝モノが好きだ」というバイアスを差し引いても、面白くてオススメの本かと。