マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー/エリザベス・イーダスハイム

 

マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー

マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー

 

 

 
マッキンゼーの中興の祖(というか実質的な創業者)、マービン・バウアーについての評伝。去年あたりから、マッキンゼーの本を改めていくつか読む中で本書が素晴らしい、という情報に接していたので手に取った。結果、「もっと早く読んでおけば良かったなぁ」と後悔してしまう良書だった。
 
最近の日本では、『元マッキンゼーの・・・・』なんていう本が乱立し、こんな記事

マッキンゼー出身の著者が人として浅すぎる件・・・(渡辺龍太) - 注目の記事

まで話題になっている。
 
しかし、本書で描かれているマービン・バウアーの人間性の高さ(勿論多少は、美化もあるだろうけれど)には刮目するばかりであった。
 
  • 株式公開すれば自身が巨万の富を得られたのに、ファームはクローズドであるべき、としてその機会を自ら閉じた。 
  • 最優秀な部下が、ちょっとした倫理違反をした際に、解雇を即断した。(周囲は唖然) 
  • 周囲から慰留されたにもかかわらず、64歳で退任。以降、現場に介入せず。 
  • ただし、80数歳になっても経営幹部会議に招かれるくらいの人望。そしてその会議でファームの収益性に関する議論を聞いていて遠慮がちに一言「プロフェッショナルファームの人間は、どうすれば収入を増やせるかを論じるべきではないと思う。ファームのディレクターやパートナーが論じるべき唯一の議題は、どうすればクライアントに良いサービスを提供できるか、ということだ。より良いサービスを提供できれば収入は増える。だが収入にこだわったらクライアントを失い、結局は収入を失う」 
  • サー・ロデリック・カーネギーの証言「マービンから教わったことの第一は、金儲けばかり考えるな、ということ。第二は、何をするにしても10年後にどうしたいかというビジョンを持って取り掛かること。第三は、新しい可能性につねに心を開いていることだ。」
 
歴史的に見て、この方が、戦略コンサルティング業界を作った、というのは過言ではないのだろうなぁ、と納得できた。
 
ただまあ、その後のマッキンゼー社は、経営陣がインサイダー疑惑で退陣するなど、俗世にまみれていったという事実もあるわけで、そこには無常を感じる。
 
とにかく、コンサルティングやクライアントに奉仕する業務に就いている人の参考として、あるいはリーダーシップ本として、この本は価値がある一冊だった。