英検1級に合格した話

先日、英検1級に合格した。留学・海外勤務経験ともに無し。Skype英会話以外は独学だ。
 
あくまで目的は「英語力を上げたい」ということで、この資格そのものが必要だったわけではない。
 
挑戦を思い立ってから2年半(この期間内に挫折中断期間約6ヶ月あり)かかったことと、二次の合格点数はスレスレなので決して大きな顔はできないと思う。資格そのものには意味を求めない立場だし、英検1級という資格そのものへの批判*1があることも理解している。しかし、英検受験は一つの目標として、英語勉強のペースメーカーになってくれたこと、四技能の実力を試す手頃な試験であること、などを考えると、この挑戦は良かったと思っている。
 
自分も、戦略や戦術を立てる上で、英検1級に関するWeb情報にはかなりお世話になった。自分も自分なりにここに至る道のりを総括しておきたい。
 

 

 

0:経緯の記録

英語は昔から好きではあったが、仕事の実務で使う経験は殆どなかった。

英語の勉強を思い立ったのは2013年の1月。少し準備を初めてその年の6月に腕試しとして英検準1級を受験して合格。これは思ったよりも余裕だった。その後TOIECの900点を目標として受験して、2013年秋頃に895点到達。その後勉強一時中断してしまったのだが、2014年の秋に英検1級初受験。思ったよりも良い点(一次不合格A)だった。2015年の1月も受験したのだが、勉強を重ねて受けたにも関わらず初回より点数が下がるという苦杯をなめる。そして2015年の6月の三回目の受験で一次・二次試験に合格した、という経緯。
 
 
1:自分好みの勉強スタイルでやる
僕は昔から独学が好きなのと、仕事に家事に忙しくて英語のために教室に定期的に通うのは無理だったので「独学に徹する」と決めて始めた。ただし、これはあくまで好みと個人的な事情なので、自分好みのスタイルで良いと思う。自分の場合は、教室に通う事を考えれば安いものだ、との考えで「英語教材本」は結構買った。40冊くらいは買ってしまったかもしれない。当然、全部をしっかりやる事はなかった。振り返って見れば「買い過ぎ」だったと言える。しかし、これは自分のスタイルだし、コスト的にも教室に比べれば安いだろうからある程度納得している。
 
2:習慣化
仕事柄、「行動変革理論」を勉強しているので「習慣化」の重要性と威力については以前から理解していた。そこで英語の勉強に関しても中身よりも「習慣」にすることを意識して考えた。僕は朝起きたら必ず一杯の白湯を飲むが、そのお湯を沸かす間にやる勉強を決める、通勤電車の中で必ずやる作業を決める、子供の習い事の待ち時間にやることを決める、帰り道で必ず英語のpodcastを聞くなど、生活習慣に組み込むことを徹底し、1日あたりの隙間時間の中で最低1時間くらいは英語の勉強をする状況を作った。(合格前の1年間は365日最低1日1時間はやってたと思う)
 
3:Ankiの活用
上記習慣の中で、中核になったのが「Anki」というWebサービスで英単語や瞬間英作文をやることだ。実は、英語の勉強を始めてから1年くらいで、やる気も減退して停滞期を迎えていた時期があったのだが、2014年5月にAnkiを導入してから加速的にボキャビルが増え、英語力増進の原動力になった。あと、「瞬間英作文」をAnkiでたくさんやるようにしたことで、結果としてアウトプット力の向上に繋がった。ちなみにAnkiをどこでも気持ちよくやるため、という口実で、iPadAirのセルラー版を買ってしまった。出費としては大きい。しかし、これがおそらく一連の英語学習にかけた中で一番大きなものだった。実際にかなり活用できたので、投資として元は取れたかなと思っている。
 
考えてみれば英語学習に限らず僕の能力的な弱さは、「記憶力が弱い」「一度読むと分かったかのようになるが、すぐに忘れている」というところにある*2のだと思う。この弱さにAnkiがズバリ、フィットしてくれた。本で読んだ英語の知識は、手間でもAnkiに入力したことで自分の血肉になった。
 
3:日→英の暗記は必須
 自分もそうだが、日本の受験勉強で英語を学んできた人は、「英→日」は強いが「日→英」は弱いとケースが多い。だから話せない、書けない。しかし、英検には作文もスピーキングもある(これが通常のTOEICなどに比べて良いところだと思う)ため避けて通れない。単語にしても文章にしても「日→英」で覚えるのが良いと思う。Ankiでも日→英を増やした。少し細かく言うと「難単語」は読んだり見て分かればいいので「英→日」だが、実際に使いたいものは必ず「日→英」で覚えるようにした。
 
 
4:英検1級固有の対策
大前提として、WEBでこの試験の特徴に関連する情報はよく集めた。「英語力をあげる」というのがゴールだったので、「(点取り)試験対策」をすることは自分の本意ではない。とはいえ、忙しい中でやっているのだから、ゆったりとした遠回りもできない。(試験の代金も安くはないので無限に受け続けるわけにもいかない)
 
さて、4技能(読む、聞く、書く、話す)の視点から重点資源配分を考えた結果、自分はとにかくボキャビルで攻めることにした。なぜなら、ここはセンスに左右されずに勝負できる(しかもAnkiという武器が効く)分野だからだ。リスニングや作文は純ジャパ人材の自分には厳しい。結果、パス単1級は単語も熟語もほぼ全部覚えて、プラスでもう少しやった三回目の受験で 22/25となり、合格の原動力になった。ちなみに、自分の場合は(もともと得意だったというのもあるだろうが)これより、長文読解の勉強はほとんどしなくても良かった。リスニングについては、NHKラジオ講座、やさしいビジネス英会話のCDを使ったディクテーションでの体力勝負。これは苦行だった。もうやりたくない、というのが本音だが、力はついたのだと思う。
 
二次試験の対策として、旺文社の公式の対策本を買って、試験までに定番フレーズの暗記に務めた。しかし、当日はボロボロで、合格点もスレスレだったので偉そうなことはいえない。ただ一つ言えるのは、この本の模範解答は難しすぎるだろう、ということだ。
試験の直前にとあるサイトで「二次試験は、英語力だけではなくて、総合的なコミュニケーション能力を試すもの。だから、試験官に"この人間ともっと話したい”と思わせることが大事、と読んだ。社会人経験の長い僕は、この説明にはピンとくるものがあった。この路線で頑張ったらなんとか合格できた。
 
なお、英検1級は英語力とは他に、政治・経済・歴史・環境・社会の知識が必要だと言われている。自分は幸いにも、仕事柄これらのことについては通常の受験者の方よりも知っていたのだと思う。だから特段の対策はせず、英語のみに集中した。他の方の体験記を読むとここが不足している場合には僕が上に書いたことに加えてここの対策も必要になるだろうとは思う。
 
 
5:テストというもの
学生時代にも受験やら色々な模試を受けていたが、その頃はテストというものを真剣に考えたことがなかった。今回の経験を通じて、一発勝負の試験には実力の出方に幅がある、ということを学んだ。すなわち、受験時点での実力を100とすると、テストでは85〜115くらいと結果にブレ*3がでる。さて、自分の場合は、3回受験した。初回から三回目の一年間で実力は着実に伸びていったと思うが、このテストの結果の出方は大きくブレた。初回は多分当時の実力の100以上が出た。二回目は実力の85くらいだった。これは精神的には凹んだ。三回目は実力が十分に伸びていたので、一次試験については、軽々ラインを超えた。「結局は実力を伸ばすしかない」という身も蓋もない結論を実感した次第だが、そういうことだと思う。(逆に、受験自体にはここまで考えたこともない。我ながらボンヤリとした人間だったと思う)
 
6:感想
合格はして良かったけれど、二次試験はスレスレだったし、リスニングもスピーキングもまだまだ自信は持てないから「嬉しさも中くらいなり・・・」という感じだ。「英検1級はスタートライン」というフレーズはよく目にするが、まさにそうだと思う、ということで勉強は継続中。語学訓練癖がついたことが良かったと思う。
 
 
以上、まとまりの良い記事ではないかもしれないが、一つの記録として誰かの参考になれば幸い。使った教材や良かった本(随分色々買ってしまった…)については別のエントリを立てたい。

*1:世界では通用しない、とか語彙偏重とか。

*2:だからブログを持って記録している

*3:テスト、能力測定を学問として学んでいる人には当たり前過ぎる話