火花/又吉直樹

 

文藝春秋 2015年 09 月号 [雑誌]

文藝春秋 2015年 09 月号 [雑誌]

 

 夏休みのOFFのお供には月刊文藝春秋。読むべきところが沢山ある。我ながら、おじさんぽくなったものだ。

火花…巧いと思う。個人的にはこれは、青春とオブセッション(脅迫観念)を扱った小説だと思った。舞台が僕の生活圏に近いので余計に情緒を感じる。練馬立野郵便局なんて出てきてその哀歓?が分かる人間はそう多くはないだろう。

選評は相変わらず味わい深かった。村上龍が火花に対して「長い」と文句をつけていたが、自分も少し「長い」と思った。


この種の人文系の「賞」とは、とても難しいものだ。この小説が芥川賞としておかしいなどとは思わない。けれど少し前に選に漏れた、小谷野敦「母子寮前」の方が個人的には好きだ。

 

ところで、本文藝春秋には相方を失った「今くるよ」師匠のすばらしい手記が掲載されている。コンビ漫才が題材の「火花」の掲載に合わせてきたのだろうか。だとしたら編集の妙だと思う。