沈まぬアメリカ 拡散するソフトパワーとその真価/渡辺靖

 

沈まぬアメリカ 拡散するソフト・パワーとその真価

沈まぬアメリカ 拡散するソフト・パワーとその真価

 

願望まじりの「衰退論」とは裏腹に、いまだ世界はアメリカの魅力と呪縛から逃れられない。中国や中東へ積極的に進出する大学やウォルマート、アフリカのメガチャーチ……こうしたアメリカの「文化的遺産」が、政治・教育・宗教などあらゆる分野で世界中に拡散、浸透している。アメリカ研究の第一人者が現場を歩き、その影響を考察する意欲的論考。

 

上記の概要から面白そうだと思って読んでみた。雑誌への連載をまとめたもの、ということで覚悟していたよりはライトな感覚で読める。ビジネス機関と化した大学が貪欲にアブダビやら上海に進出する姿や、メガチャーチがアフリカでの同性愛反対運動に力を貸しているところなど、「そんなこともあるのか!」と勉強になった。

著者が本書最後に指摘しているように、アメリカ的価値観が世界に広がっていることは単純に「文化帝国主義」と「新植民地主義」というかたちで片付けられない何か、を持っている、と僭越ながら自分も思う。だからこそ、こういう本を読むことが面白い。