スティーブ・ジョブズ(2016) by ダニー・ボイル監督

 
その名の通り、スティーブ・ジョブズを扱った映画。
 
監督・脚本・主役が豪華なので、映画ファンとしては嬉しい。特に脚本家は僕の好きなアーロン・ソーキン*1だ。
 
本作の特徴は、実在のスティーブ・ジョブズが現実社会で大きなアイコン過ぎて、多くの観客は映画を見ながらも常にこの人の実在感を意識してしまうということだろう。冒頭から出てくる一風変わった20代の青年は、最終的には世界を変える男だ、と画面を見ながら常に生々しく思ってしまう。脚本のアーロン・ソーキンはこれを前提においた上で本作の構成を組み立てていると感じた。
 
この映画はあたかも、現代の「神話」のように感じられた。そう、これは、今のコンピューティング社会の起源を描いた「神話」なのだ。実際、ジョブズは一つの生態系を創造した神だ。実の親に捨てられた子(ジョブズ)が、資本主義という父(スカリーに人物として表徴されている)と戦い、新たな世界を創造した。一神教の神は気まぐれで、常人には理解できないほど理不尽なものなのだ。
 
アップルのビジネスは、最も偏屈で拡張性に欠けると思われていたが、結果的には最も世の中人々に受け入れられた。僕は、このあたりに初期「一神教」との類似を読み取った。ソーキンはその辺りも意識してシナリオを起こしていると思う。

*1:The West Wing, Money Ball, Social Network...