掏摸(スリ)/中村文則

掏摸(スリ)

掏摸(スリ)





大江健三郎賞受賞作にして、LAタイムズ文学賞候補作、
アメリカ「ウォール・ストリート・ジャーナル」2012年ベスト10小説、
アメリカ・Amazonのbest books of the month(March)に選ばれたベストセラーがついに文庫化。

綾野剛氏絶賛! 「血も心も身体も嘘みたいに、ここには確かな生(じじつ)がある」


著者の芥川賞受賞作は読んだと思うのだが、特に印象は無く、それ以降特にフォローしていなかった。ところが、自宅に文庫の本作があったので(純文学好きの義母が置いていった・・・。本作は世間的な評価も非常に高いらしい。)読んでみたら、とても自分の趣味に合致する良い作品だった。かなり自分好みの部類。とても良い小説だと思っただけに、もっと話を広げてくれたらよかったなぁという気がする。たとえば、暴力と悪を追求した村上春樹の「ねじまき鳥」は大長編になっているわけだし。ただし、本作は後に姉妹編の作品(「王国」)が書かれたらしい。読むのが楽しみだ。


悪を描く、と言う意味では、2000年代後半の米国の映画作品、「ダークナイト」「ノー・カントリー」と多少関連しているのかもしれない。


著者は本作を書くにあたって旧約聖書を意識したそうだが、アマゾンレビューではその辺に言及している人は居ない模様。数年前から、個人的に、旧約聖書についてはちょくちょく解説書を読んだり現物を読んだりしてきたのだが、やはり旧約聖書はこの世界を考える上で、重要な書物なのだと思う。