校長という仕事/代田昭久


校長という仕事 (講談社現代新書)

校長という仕事 (講談社現代新書)


杉並区和田中といえば、民間人校長の藤原和博氏(元リクルート)が就任し、大きな改革を行ったことで有名である。著者は、そのあとを引き継ぎ、二代目の民間人校長として公立中学の校長に(公務員・教職経験なく)いきなり就任した。そこでの実践・奮闘の記録である。

公立学校に子供を通わせる親(特にビジネスパーソン)として読むと、普段なじみの無い「公立学校」という組織体の動き方をよく理解できる。なにより、本書には全編に生徒への愛と、現場で頑張る先生達へのリスペクトに溢れており、気持ちよく共感しながら読めるのが良かった。

人事コンサルタントとしては、教員の人事管理と、そこで校長が果たす役割についても書かれている点が興味深い。人事異動の権限は校長にはない。具申はできる。人事考課はするが、教員の側に自分の人事考課についての「開示請求権」があり、和田中の教員は半分くらいが請求をしていた、と。ちなみに、教員の考課は相対評価である一方、今、子供の学力評価は絶対評価になっているとのこと。

また、本書は、抽象化していえば「自身が実務経験のない分野にトップとして乗り込んだマネジメント」の記録でもある。そういう点でビジネスパーソン(特に管理職)にも参考になるだろう。

藤原和博氏については、個人的にはファンで本を沢山読んで来た。本書には、この代田さんの目からみた、藤原流マネジメントへの感想みたいなものが、ほんのちょっと(非常に品よくしかし率直に)書かれていて、その点が個人的には印象的だった。どちらの校長も、素晴らしい功績を残してくれたのだと思う。

ニュースを見る限り、民間人校長には「とんでもない人」も少なくないらしい。本書と併せて考えると、「民間人校長、すなわち悪い/良い、ということではなく、いかに適任者を選抜してサポートして活躍させるかである。(そう考えると、おのずと民間人はごく少数・採用プロセス厳選)」ということなのだと思う。ちなみに、この代田(元)校長は、前任の藤原氏からの推薦を受けて杉並区が決定したようで、いわゆるオープン公募ではなかったそうだ。