「バカな」と「なるほど」 経営成功の決め手!/吉原英樹

「バカな」と「なるほど」

「バカな」と「なるほど」


絶版となっていた本書は、長く経営学(者)界の「レジェンド」本であったと思う。ベストセラーとなった『ストーリーとしての競争戦略』の楠木先生や、玄人界では企業戦略論のエースとも言われる神戸大の三品先生が、それぞれの著書の中で本書を絶賛していたからである。他の方の著書の中でも本書の名前を見かけた気がする。


そんな本が遂に23年ぶりの復刊となった、と、オアゾ丸善に平積みされていたので、手に取ってみたら、楠木先生の熱い序文*1と、吉原先生の書き下ろし序文もあり、思わず購入してしまった。



幻の本の実物を初めて読んでみて分かったことは、これは連載を集めたエッセイ集というような本であること。後世にまで注目されていた「バカな」と「なるほど」を扱っている部分は本書のごく一部だ。しかし、そんな核心的なアイデアを残し同分野の後輩にインパクトを及ぼしたのだから、名著に違いないし、特にその部分は「戦略論」に興味のある人には必読と言って良いだろう。


ちなみに、僕は、本書の核心部分は、楠木先生による「復刊に寄せて」*2と吉原先生による「新版まえがき」「はしがき」第一部「1:「バカな」と「なるほど」」・「2:答えをみながら答案を書く」・「3:べき論よりも予測論」だと思っている。


肝心の内容に少しだけ触れると、本書は「競争優位を築くには、優位性を持った差別化だ」というごく当たり前の考え方の「その先」を示している。


引用しよう。


私は、尊敬される差別性より、後者の軽蔑され、バカにされる差別性のほうが、戦略が備えるべき差別性の特徴としてはずっと重要であると思う。なぜか。(P49)


この文に、まさに「バカな」と「なるほど」と思う。


おまけ:connecting dotsしてみる。

クリエイティブディレクターの岡泰道さんが、Surprizing yet right!という概念を提唱していると読んだことがある。(驚きだけど、でも、腑に落ちる、という意味)これ、まさに「バカなる」。知的生産の本質をつく言葉なのでしょう。非才の身ながら、そんな仕事に関わる身としては心したい概念です。

*1:今回は伊丹御大が「らしい」形で登場

*2:これが素晴らしい解題になっている