ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー/ジェームズ・ガン監督(2014)


映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』予告編 - YouTube

 

こういう表現は陳腐なのであまり良くないと思うがこの映画、「普通に面白かった」。前評判通り音楽*1は最高だし、脚本やキャラ造形、SFX、全てが「普通に」ハイレベル。

 

今年(2014年)、アメリカで大ヒットしたこの作品。予想通り、日本ではそこまで流行していない。こうした日米の乖離は大きくなる一方だ。それはそれで日本に独自の文化が育っていることの証左とも言えるから非難はしたくない。だけれど、ビジネス的に儲からなければアメリカの映画は日本では見捨てらていくわけで、ヒックとドラゴン2の公開が遅れている(結局されないかも…)ことなどを個人的には憂慮している。

 

それにしても、それほどアメコミ好きでもなかった自分が年間に2つもマーベル作品を見るとは思わなかった。ただし、映画としての総合的な深みで言えば、本作よりも今年の5月に見た「キャプテン・アメリカ2 ウィンターソルジャー」の方が圧倒的に良かった。なんだかんだで、いよいよ今後のマーベル作品はしばらく見続けないといけないようなファンとして取り込まれてしまったなぁ。

*1:冒頭の10ccから、たまりません。

夢と狂気の王国/砂田麻美監督(2013)


デビュー作『エンディングノート』が絶賛された砂田麻美監督が、国民的アニメーションスタジオ、スタジオジブリを捉えたドキュメンタリー。『となりのトトロ』など世界中で愛されている名作の数々を生み出してきたジブリの中核を担う宮崎駿監督、高畑勲監督、鈴木敏夫プロデューサーに密着し、緊張感に満ちた創作の現場を映し出す。数十年にわたり苦楽を共にしてきた三人の確執や作品に懸ける思い、夢を生み出す創作の秘密に触れることができる。


最近、少しジブリづいていたので、せっかくならこのドキュメンタリー映画も見てしまおう、とDVDを借りる。


映画単体として見ると「まったりし過ぎ」で、期待外れ。「中央線で東小金井から都心に向かう宮崎駿監督の絵」とか「なぜか文句を言ってるシーンだけの宮崎吾朗」「宮崎監督の隣の席の女性が、うん、いかにも」だったり、とか、ちょっと面白いところはあったけれど。

全体としては、(実は宮崎駿よりも更にジブリの核心に居る)「高畑勲」という巨大な変人の存在をせっかく浮き彫りにしかかっているのに、なんか入り口のほのめかし段階で終わってしまっているのが、勿体無かった。いろんな制作上の事情があったのだとは思いますが。

『思い出のマーニー』/米林宏昌監督(2014年)




僕はスタジオジブリに特段の強い思い入れは無い。最近読んだ鈴木敏夫Pの新書「仕事道楽」が面白かったので、ジブリの最後を見届けようか、、、くらいの軽い気持ちで劇場へ足を運んだ。

こんな経緯だったので期待値ハードルの低さが良かったのか、それとも、一人で見に行って周りも空いていて大画面に没頭できたのが良かったのか、序盤から主人公の心情が自分の心に素直に入って来て、予想外の感動を得てしまった。それにしても絵が奇麗。この絵のクオリティは世界の中でも日本だけが出来る部類だと思う。「アナ雪が、ディズニーがなんぼのもんじゃい!」と愛国心まで刺激されるレベル。

そもそもが、僕はこういう屈折した主人公(中二病)のものとか、祖父母の愛的なものに個人的に弱い。あとは、自分の中に親目線が産まれて来ているのも感動した要因かもしれない。「子どもがフラジャイルな思春期を抜けて大人になる(本作のテーマ)て、ホント大変なんだよね」というところに感じ入ってしまった。


ストーリーについては、個人的には「主人公が一夏の経験で成長する」という話だけで十分だった派、なので、最後の最後の理屈っぽい展開は不要かなと思った。



宮崎駿高畑勲引退以降のジブリがどうなるのかが取りざたされており、一説には制作から手を引くともあるが、これだけのものが作れるのだから、活動を継続して欲しいと思う。天才二人は作品だけでなく、後続も産み出していた。

と、かなり絶賛したが、これは乗れる人乗れない人が分かれるタイプの作品ではあると思う。でも、宮崎駿ブランドの過去のイメージに依存し、本作を見ずにジブリを語っている人がいるならば、「これを見てから言ってくれ」と言いたい。

グランド・ブタベスト・ホテル/ウェス・アンダーソン監督(2014)

ムーンライズ・キングダム」「ダージリン急行」のウェス・アンダーソン監督が、高級ホテルのコンシェルジュとベルボーイが繰り広げる冒険を、名優レイフ・ファインズを筆頭にオールスターキャストで描いた。ヨーロッパ随一の高級ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」を取り仕切り、伝説のコンシェルジュと呼ばれるグスタヴ・Hは、究極のおもてなしを信条とし、宿泊客のマダムたちの夜のお相手もこなしていた。ホテルには彼を目当てに多くの客が訪れるが、ある夜、長年懇意にしていたマダムDが何者かに殺害されてしまう。マダムDの遺産をめぐる騒動に巻き込まれたグスタヴ・Hは、ホテルの威信を守るため、信頼するベルボーイのゼロ・ムスタファを伴い、ヨーロッパを駆けめぐる。


ウェス・アンダーソン監督の最新作。人様に対して「ウェス・アンダーソンが好き」などと言うと、スノッブなカルチャー系人間と思われるんだろうな、と微妙な思いを抱えつつ、実際、好きなので行って来ました。

見た後に、「すっごく、ウェス・アンダーソンぽい作品だったよ」などというと、これまた、スノッブなカルチャー系人間と思われるんだろうな、と思うわけですが、実際そうでしたのでそうとしか言いようがありません


好きな俳優、エドワード・ノートンが出てるのは事前に知っていたのだけど、終わるまで全然分からなかった。

塔の上のラプンツェル(2010)/バイロン・ハワード監督



アナと雪の女王』が大ヒットした。(私も見た。)この大ヒットにより、改めて製作総指揮、そしてディズニーのチーフ・クリエイティブオフィサーであるジョン・ラセターにスポットライトが当たったようで、これは個人的に嬉しい。この『塔の上のラプンツェル』は、ラセターがディズニーのクリエイティブを見るようになって以降の重要な作品(企画段階から全てに関与)とされている。これが未見だったので、DVDにて視聴。結果、色んな意味で、この作品が確かに『アナ雪』へのステッピングストーンになったのだな、という事を感じた。たとえば、ミュージカル要素の盛り込み方は、これよりも『アナ雪』の方が更に洗練されている。


単体としてみると、継母の造形が「性的魅力でも娘と張り合おうとする束縛系母親」であったり、「なんだかんだ言ってもこれ結局『監禁虐待』だよな」と思ったり、原作であるグリム童話からは大分改変したそうだが、それでもやはり怖い「グリム童話」のエッセンスを感じたのだった。

ビジュアルは奇麗だし、ストーリーもまっすぐで分かりやすいし、これはこれで傑作・大ヒットしたのがよく分かる作品。

キャプテン・アメリカ2 ウィンター・ソルジャー/アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ監督


『アベンジャーズ』でのニューヨークの戦いから2年後を舞台に、キャプテン・アメリカと暗殺者ウィンター・ソルジャーとの死闘を描くアクション大作。70年の眠りから覚め、アベンジャーズの一員として戦ったキャプテン・アメリカが、S.H.I.E.L.D.(シールド)の仲間に突如襲われ、その裏に潜む真実を追う姿を映し出す。監督は、『ウェルカム トゥ コリンウッド』のアンソニー・ルッソとジョー・ルッソ。キャプテン・アメリカ役のクリス・エヴァンススカーレット・ヨハンソンらが出演。新たに加わる名優ロバート・レッドフォードの役どころにも注目。


この映画が、表面上のアメコミストーリーの下に隠し持っている意味については、濃厚な解説記事が沢山ネット上に出ている(町山さんのラジオの文字起こしが分かりやすい)ので、詳細はそちらを参照いただきたいものの、自分なりに要約して言えば「アメリカの建国の理念である“個人の自由”のために戦うと、結果として、今のアメリカ国家組織の反逆者になってしまう」という構造を下敷きにした、なかなか骨太なストーリーだったと思う。


主人公の「演説力」はさすがアメリカンリーダーという感じ。一方で、武器が「盾」だけである、という設定。まるで自衛隊の暗喩か、アメリカらしからぬな、と思うほどで、ここにも作り手側のメッセージが何かあるのだろう。(今回の敵は「正義のためなら、無人機からの先制攻撃を辞さず」の人たちである事と極めて対照的。)

ローン・サバイバー/ピーター・バーグ監督


2005年6月、国際テロ組織アル・カイーダの重要工作員の暗殺を狙ったレッド・ウィング作戦のため、アメリカ海軍特殊部隊ネイビー・シールズアフガニスタンに赴く。4人の隊員が山岳地帯で偵察をしていた際、ある判断が200人超のタリバン兵から攻撃される状況を呼んでしまう。絶体絶命の状況下、崖から転がり落ち全身負傷しながら自分と仲間を信じて行動する4人。生死を分ける選択に次々と迫られる過酷な場に立ち向かっていくが…


友人からの「お前が好きそうだぞ」(だけで、理由は示されず)との推薦情報あり、見に行って来た。

予備知識が殆どない状態で見に行ったので、当初は「ランボー 怒りのアフガン」みたいに、アメリカ人が超人的な活躍をする話かと思いきや、まるで違った。*1

リアリズムの描写で、痛い、苦しい、不条理、の連続である。「戦場の現実(もちろん、これだって映画ですが)とはこういうものだ」ということを静々と突きつけてくるタイプの作品。

先進国の都会で暮らしていればこの世界は一見平和に成立しているように見える。しかし、世界の「限界的な際(きわ)」、たとえば本作のようなアフガンの山中、では、世界の「矛盾」が剥き出しになる。こういう「とんでもなく厳しく荒々しい現実」を描いた作品を見るという事が、映画を見る楽しみ、というか「意義」の一つだと思う。しかしながら、この手の映画は日本では興行成績が著しく悪い。やがてこういう映画が日本で公開されなくなってしまうのではないか(それは日本にとっては損失だと思う)、と陰ながら心配している。

映画の最後に、実際に亡くなった隊員の写真と享年が示される。単に示されるだけなのだが、この2時間の映画を見たあたとでは、「戦争とは、20になったばかりの若者達がこういうバカバカしいというか残酷というか無茶苦茶なことをする(させられる)ものだよ、お前(観客)らそのことわかってるか?」と問いかけてきたような気がした。

*1:とはいえ、この隊員4名は海軍の精鋭SEALsなので常人離れして強いは強い。反撃してタリバンをかなり殺めている。以下余談ながら、最終的にビン・ラディン暗殺作戦の実行部隊になったのもSEALs。映画やドキュメンタリーでSEALsものを見るたびに、アメリカはこういう「暴力装置」を持っており、米国大統領はそのトップなわけだよね、といつも思う。