高品質日本の起源 発言する職場はこうして生まれた/小池和男


高品質日本の起源―発言する職場はこうして生まれた

高品質日本の起源―発言する職場はこうして生まれた


この分野の専門家の間では説明不要の碩学小池和男先生。



仕事上でほんの少しだけ接点があっただけなのに、ご本人から頂いてしまいました。恐縮至極です。



★ 日本=高品質=競争力。その源泉は、当事者意識を持って時には職分を超えて発言する現場従業員にあり


という図式は良く言われる*1ところだと思う。


その起源を歴史的に遡って検証した本である。



さて、★ は正しい(正しかった)と思うのだが、今、★が色んな意味で揺らいでいるのも事実だろう。



揺らぎの状況は複雑すぎてブログに軽々に書けるものではないが、


世界の経済構造の変化がもたらしているもの、


日本内部の変化がもたらしているもの、両方がある。



回顧主義になってはいけないし、拙速な転換論も上手く機能しないだろう。


じっくり考えていきたいテーマだ。

*1:伊丹先生の人本主義理論など。

Facebook上場に当たってのCEOマーク・ザッカーバーグから株主への手紙


経営、企業文化等々の観点からとても興味深かった。

日本経済新聞の和訳が素晴らしい。



「メッセージが素晴らしい」「日本企業も真似すべきだ!」とは思わない。(そもそも、真似なんかできるはずない)

逆に「アメリカ的な楽天主義」「異常事例」「体のいいプロパガンダ」と片付けてもいけない。

Facebookはちょうど今日で創業8周年だそうだが、それで時価総額7兆円らしい。これに関心を持たずにスルーしてはいけないと思う。


以下の本がとても良質。


フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)


(参考)


5つの核となる価値を抽出し、経営に活用しています。

インパクトに焦点を当てる

 もし最大のインパクトを与えたいと考えるのなら、最良の方法は最も重要な問題の解決に焦点を合わせることです。簡単に聞こえますが、多くの会社はこのことをおろそかにして時間を無駄にしています。私たちはフェイスブックのすべての人びとが、取り組むべき最も大きい問題を見つけるのにたけていることを期待しています。



速く動く

 速く動くことでより多くのものを作り、速く学べます。しかし多くの企業は大きくなると、速度低下による機会損失よりも失敗をより恐れ、スピードを落としてしまいます。私たちは「速く動いて失敗せよ」と言っています。もしも速く動かなければ、失敗することがないからです。



大胆であれ

 素晴らしいことをなし遂げるためには、リスクをとる必要があります。これは恐ろしいことで、多くの企業は本来やるべき大胆な選択を避けます。しかし世界の変化スピードは速く、リスクをとらなければ失敗が待ち受けています。こういう言い方もしています。「最大のリスクは、リスクをとらないことだ」と。私たちは皆に、大胆な決断をするように促しています。



オープンであれ

 より多くの情報があればよい選択ができ、大きなインパクトを与えられます。だからこそ私たちは、オープンな世界はよりよい世界だと考えています。このことは私たちの会社の経営にも当てはまります。私たちはここで働くだれもが会社に関する可能な限り多くの情報に触れ、よい決断ができるように心がけています。



ソーシャルバリューを作れ

 再度申し上げますが、フェイスブックは世界をよりオープンにして人びとの結びつきを強めるために存在しており、単に会社を作ることが目的ではありません。私たちはフェイスブックの全員が、日々の活動を通じて世界に本当の価値を提供することを期待しています。

週刊東洋経済 落日パナソニック

http://www.toyokeizai.net/shop/magazine/toyo/detail/BI/4e91208400c62968193b31d1451d8dd2/




1月28日の週刊東洋経済。20ページを使って「落日パナソニック」の特集。



日本企業の経営(日本的経営)に興味のある人なら読んで損は無い感じの記事だった。

ITバブル崩壊から経営を立て直したとして名高い、中村邦夫会長を「聖域化した悪しき院政」と明確に指摘しているのには、驚いた。思い切った記事だ。10年くらい前に大学院で電機業界を色々題材にして勉強したので、この記事はとても興味深く読んだ。


周囲に「ノー」を言わせない中村の存在・それはボトムが勝手に動きがちな分権型の大企業で構造改革を断行する上では抜群に機能した。

しかし、それに続く「創造のステージ」ではどうか。(略)ここで中村が誤った見通しを持つと、軌道修正が利かなくなる。巨資を投じながらつまずいた、プラズマ事業はその悲劇と言える。(P.34-35)

「まるごと事業」についても、松下は、30年以上前から、グループ総力を上げて、と言いつつ実現できていない。結局はハード優先・プロダクトアウトだ、それはDNAに基づくものだ、と手厳しい。

結果を取り上げてのイージーな批判は無意味で、それに与するつもりは無い、が、経営というかビジネスの難しさを感じる。

日本の電機産業、パナソニック、頑張って欲しい。応援している。

うちのテレビはさんざん考えた挙句に買った、パナソニックのプラズマです。


(参考文献・これ名著)


松下電器の経営改革 (一橋大学日本企業研究センター研究叢書)

松下電器の経営改革 (一橋大学日本企業研究センター研究叢書)

日経ビジネス2011年10月24日/伊藤忠商事 岡藤正広の経営教室


日経ビジネスは、経営新潮流という記事の枠で、経営教室という経営者による4回もののシリーズを連載することがある。

前はマクドナルドの原田CEO。これが面白かった。(このブログでも紹介した)

最近は、伊藤忠の岡藤社長で、これも面白かった。


  • まずは目先の仕事に邁進せよ(ビジョンを語ってその通りになることは稀。商社が過去のビジョン通りに行ってたら、今頃ごっつい儲かってますがな。)
  • 仕事に手を抜くな(村の祭酒のエピソード)
  • 競争条件は変えられない(仕事の出来ない人ほど、ルールや環境に細かい文句を言う)
  • 商売の損は仕方ない。人としての信用を失うな。
  • クレームは吉
  • 仕事を心から楽しめ

岡藤さんには部下に示していた門外不出の「儲けの10箇条」というポリシーがあるとのこと。第一条は「難事は自ら行い、大事は細部を指揮せよ」らしい。この10箇条、全部見てみたい。

戦略シーケンス…日経ビジネス連載「マクドナルドCEO原田泳幸の経営教室」より

日経ビジネスで、7/11号から連載が始まった「マクドナルドCEO原田泳幸の経営教室」が面白い。

連載第2回では、「戦略シーケンス」として、経営の施策展開の「順序」に力点を置いた解説。この種の事は意外に具体的な事例で分かりやすく説明される事が少ないので貴重である。ジグソーパズルの模式図を使った日経ビジネスの図解もGood。戦略論に興味のある方は手にとってみると良いと思う。

以下、雑談ながら。

戦略論というと、ポジショニングビューとリソースベースドビューの2つの見方が有名だ。しかし、それと少し分析の角度を変えて「時間展開」を強調する戦略論の学者も少なからず居る。さらに、実際の経営者になると、この「時間展開」をとても重視する方が多いと思う。原田氏が今回語った「戦略シーケンス」と、ミスミCEOの三枝匡氏が著作の中で「経営の因果律」という言葉で表現しているものとは、おそらく同じものだろう。

「時間展開を加味した、戦略的思考」を体得するためにはどうしたら良いか・・・と考えて思い浮かぶのは実はボードゲームである。将棋とか、囲碁とか。原田CEOはマージャン好きを公言しているが、マージャンも良いのかもしれない。

これらのゲームでは、相手の出方を少し先まで読んでから、今の段階で自分が取るべき手を考える。そして、その際、当たり前だけど、ゲームでは、「一手」しか指すことはできない。何もかも同時に、するわけにはいかないのだ。これが会社の施策になると、一転して、何もかも同時にしたくなる人が多いのはなぜだろう。


更に、思い出したことがある。僕が昔通っていた大学院で戦略論を担当していた沼上幹先生は、「時間展開を加味した戦略論」を重視する方だった。入学当初のオリエンテーション合宿では「ディプロマシー」というヨーロッパ軍事のシミュレーションのゲームをこの先生の肝いりでやった。そのゲームをやらせる狙いこそ、「時間展開」を加味した戦略の妙味を体感させる、というものであったと記憶している。ディプロマシーの本物(リアルボードでの対戦)をかなり長時間掛けてやれたのは、良い経験だった。この先、もうディプロマシーやる機会もなさそうだしな…。

テレビ東京/カンブリア宮殿/未来工業創業者 山田昭男氏

先日の未来工業の回、面白かった。内容紹介はこちら



同社が高収益かつユニークな経営を貫ける背景には、「寡占」という競争構造上の理由があるのだと思うが、それはさておき、同社が社内の至る所(講堂、作業所、トイレなどなど)に掲げていたキャッチフレーズ



常に考える



というのは、本当に良いフレーズだと感心した。



司会の村上龍氏はそれが「常に考えろ」(命令)でも「常に考えよう」(同意を求める)でもなく「常に考える」という表現であるという点に着目していたが、素直になるほど、と思う。

自分が上司だったら、かなりの確率で、「常に考えろ」と言ってしまいそうだ。


常に考える、という文字を毎日見せられると、「人間なんだし、自分で考えないとまずいよな…」「俺は常に考えているんだろうか」という内発的動機が湧いてくるような気がした。

クリステンセン氏の「最後の授業」

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)



イノベーションのジレンマ」と言えば、戦略論・経営学の分野では後々まで語り継がれる名著としてその分野では有名。MBA的な大学院に行ったりすると、まず間違い無く読む本の一冊。



その著者のハーバード大学教授、クリステンセン氏が、重い病に陥ってしまい「最後の授業」的なものを開催したらしい。最近、以下のブログを読む事によってこれを知りました。


素晴らしいエントリだと思うのでご紹介します。実際のその授業に出た方のレポートも下のエントリから辿れます。



http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2010/11/post-362.php#extended



このクラスの場は、まさに二つ前のこのブログに書いた、WHAT HOW WHO が最高度に高まった素晴らしい学びの場となったことでしょう。



自分が好きな言葉でありますが、戦略論の巨人からのメッセージの一つは、



大切なものは目に見えない(「星の王子さま」より)



っていうことかな、と思いました。