新宿鮫 絆回廊/大沢在昌


絆回廊 新宿鮫?

絆回廊 新宿鮫?


新宿鮫シリーズ第10作。

「まったく、新宿って街は妙なところだ。ばらばらに飛び散ったもんが、いつのまにかまた集まってきちまうのだからな」巨躯。凄味ある風貌。暴力性。群れない──。
やくざも恐れる伝説的アウトローが「警察官を殺す」との情念を胸に22年の長期刑を終え新宿に帰ってきた。
その大男を阻止すべく捜査を開始した新宿署刑事・鮫島。
しかし、捜査に関わった人びとの身に、次々と──。
親子。恩人。上司。同胞。しがらみ。恋慕の情。
荒ぶる男が帰還し各々の「絆」が交錯したとき、人びとは走り出す。
累計600万部突破「どの作品から読んでも大丈夫。ハマる」人気シリーズ第10作


僕が初めて新宿鮫の第1作を読んだのは、7年くらい前のことだったか。その後、コツコツと気が向いた時に読み続け、今回、割と最近出たばかりの第10作を読んだ。


前半は、「良くも悪くも、いつものパターンやな・・」と思いながら読んでいったが、終盤は、さすがの大沢先生。新宿鮫ワールドを堪能させていただきました。




新宿鮫シリーズは、国家一種のキャリアとして警察に入った鮫島警部が、とある事件がもとで上層部と対立して左遷され、それでも退職せずに現場の一捜査員として一警察官としての意地と誇りを持って活動する、という構図で展開される物語である。

こうした設定から、組織の非情さ、現場のプロの誇り、などのテーマが常に物語の底流に流れている。「働く」ということの意味を問うことも、一つの重要なモチーフになっているシリーズだ。



今回も、クライマックス近く、主人公たちが非常に危険な現場に、二人で踏み込むかどうか議論するシーンで、

「警察官が危険を避けたら、それは警察官じゃない」

というセリフがあって、これは職業人としての矜持を示す良いセリフだな、と思った。

(ブログでは説明力不足で情けないが、実際には、登場人物への感情移入が高まりきったところで、このセリフが出てくるのでとてもインパクトがある)



◎◎(職業)が××を避けたら、それは◎◎じゃない。というのは、自分に当てはめて考えてみる価値がありそう。


コンサルタントが、付加価値探求を避けたら、それはコンサルタントじゃない、とか。エトセトラ、エトセトラ。



興味のある方は、第1作から是非。世間も自分も、最高の評価は第2作の「毒猿」という作品。