人事のプロが教える 働かないオジサンになる人、ならない人/楠木新
楠木新さんは、『こころの定年』『人事部は見ている』のころから、信頼できる書き手だと思って、色々読んで来た。
最近は「働かないオジサン」問題で多数執筆されているが、本書はその中でも、メカニズム解明、というよりは「働き手に寄り添った」内容で、こういうところに、楠木さんの良さが現れるように思う。
新自由主義的な立場や、中小企業の現実からすれば、楠木さんの言論も「ぬるい」ということになるのかもしれないが、個人的にはよく共感できる内容だ。
働かないオジサンにならない7か条
第一条 足元の仕事をきちんとする
第二条 会社の枠組みを外から眺める
第三条 時間軸で見る
第四条 師匠を探せ
第五条 お金との関わり方を変える
第六条 多様な自分を受け入れる
第七条 自分の向き不向きを把握する
著者は、昔から「いい顔」の人材を追い求めて来たそうだ。人間は出世ではなく「いい顔」になることを目指すべき、と考えている。50歳以降の生き方を探るために多くの人々(特に会社を辞めて転身した人)にインタビューした結果、以下のことに気がついたそうである。
はじめは、転身者の「いい顔」は、組織からの命令や要請から離れて、自分の価値観で行動できるようになったからだと思っていた。
ところが、すぐにそうではないことがわかった。はじめに気づいたのは彼らの姿勢である。「好きなことを仕事にする」のではなくて、「自分を使って何ができるか」の姿勢で、誰かの役に立つことを真剣に考えている。誰かに感謝され、評価される心地よさが「いい顔」にさせているように思えた。
しかしそれだけではない事にも気づいた。
(略)
一つは、彼らが「新しい自分」を発見していることだった。(略)人生の中で、異なる役割を持ったり、違う自分を味わいこと自体も「いい顔」になるひとつのポイントであるように私には思える。
幾つかの異なる経験したり、違う役割を担いながら、人生を反芻するという生き方はとても「豊か」であり、「いい顔」の幾分かは、この多様な自分を体験するところから来ていると思っている。特に男性の場合は、女性に比べてライフイベント(結婚・出産など)でも人生の区切りをつけにくいだけに、そのまま一本道を歩む場合が多い。
現代の企業社会では、単一のアイデンティティを要求されがちだが、本来複数ある自己イメージを限定したり、切り捨てないことが大切である。(P178〜179)
すごく重要なことだと思うので、引用が長くなってしまった。
「いい顔」を目標に生きて行く、というのは心にとめておきたい。