仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン /横田増生

 

 

アマゾンに潜入取材したことで有名なジャーナリスト、横田増生さんの最新作。過激な告発か浪花節アジテーションか、、などと予想して読んだところ、ごくごく真っ当で冷静なジャーナリズムだった。

 

本書の本筋ではないのだけれど、ヤマト運輸についての描写、特に小倉昌男氏の経営についての記述が個人的には面白かった。

と、いうのは経営学の世界では小倉昌男氏は、ある種「神格化された」経営者であるのだが、本書では「ポピュリズム」にうまく訴えた、という点にフォーカスして通説に幾つかの疑問を投げかけているからだ。

 

特に、聖書(バイブル)ともいうべき「小倉昌男 経営学」内の有名シーン、宅配便の着想を得たという有名なUPSの宅配を見かけた場面についても、時系列に考えてやや誇張された話なのではないか、と、事実の検証を積み重ねた上で、指摘している。

 

本物の聖書含め、神話や逸話は事実かどうか、というよりもそれが後代に広まって受けいられることが大事、という面はある。だから小倉氏やヤマトをそのことで責めるつもりなどない。一方で、「経営学者」でこの神話の事実性を検証した人はいるのだろうか?と気付かされた。無条件に事実と受け止めている人が多いように思う。そんなところが個人的には面白かった。

 

それにしても、最終章のタイトルが重い。

 

終章:宅配に“送料無料”はあり得ない