なんたって豚の角煮/土屋敦


なんたって豚の角煮 (だいわ文庫)

なんたって豚の角煮 (だいわ文庫)


「男のパスタ道」で最近話題の土屋さん。これがかなり面白かったので、そもそもこの方が出していた「角煮」本を買ってみた。

やはりここでも、料理(それも一つのメニュー)に対する偏執的な探求が炸裂。(しかし、この方、奥様の仕事を支えるために引っ越して家事育児を切り盛りするなど、単なる好事家ではないのだ)

そして、何より

本書にある「基本の角煮」レシピ通りに忠実に作ったら、ホントに美味かった。

安い肉でも良い、というこの料理。本書で書かれているように、角煮は赤ワインでもビールでも焼酎でも日本酒でも良く合う。

私も繰り返し作って自分のモノにしたい。

エピジェネティクス 新しい生命像を描く/仲野徹


過日、ある知識人の方とお話する機会を得た時に「君は、エピジェネティクスって分かるか?」と言われて、はっきり答えられず恥ずかしい思いをしたので、図書館で借りて来た。(この本の存在と著者は HONZ!で耳に入っていたけれど、中身が分かってなかった orz)


結構、難しく骨の折れる内容ではあるが、エピジェネティクスという概念は良くわかった。(エピジェネティクスで説明される現象のうちの一つの)妊娠中の母親の環境が産まれた子の40代・50代にまで影響する、というのは凄い。

「バカな」と「なるほど」 経営成功の決め手!/吉原英樹

「バカな」と「なるほど」

「バカな」と「なるほど」


絶版となっていた本書は、長く経営学(者)界の「レジェンド」本であったと思う。ベストセラーとなった『ストーリーとしての競争戦略』の楠木先生や、玄人界では企業戦略論のエースとも言われる神戸大の三品先生が、それぞれの著書の中で本書を絶賛していたからである。他の方の著書の中でも本書の名前を見かけた気がする。


そんな本が遂に23年ぶりの復刊となった、と、オアゾ丸善に平積みされていたので、手に取ってみたら、楠木先生の熱い序文*1と、吉原先生の書き下ろし序文もあり、思わず購入してしまった。



幻の本の実物を初めて読んでみて分かったことは、これは連載を集めたエッセイ集というような本であること。後世にまで注目されていた「バカな」と「なるほど」を扱っている部分は本書のごく一部だ。しかし、そんな核心的なアイデアを残し同分野の後輩にインパクトを及ぼしたのだから、名著に違いないし、特にその部分は「戦略論」に興味のある人には必読と言って良いだろう。


ちなみに、僕は、本書の核心部分は、楠木先生による「復刊に寄せて」*2と吉原先生による「新版まえがき」「はしがき」第一部「1:「バカな」と「なるほど」」・「2:答えをみながら答案を書く」・「3:べき論よりも予測論」だと思っている。


肝心の内容に少しだけ触れると、本書は「競争優位を築くには、優位性を持った差別化だ」というごく当たり前の考え方の「その先」を示している。


引用しよう。


私は、尊敬される差別性より、後者の軽蔑され、バカにされる差別性のほうが、戦略が備えるべき差別性の特徴としてはずっと重要であると思う。なぜか。(P49)


この文に、まさに「バカな」と「なるほど」と思う。


おまけ:connecting dotsしてみる。

クリエイティブディレクターの岡泰道さんが、Surprizing yet right!という概念を提唱していると読んだことがある。(驚きだけど、でも、腑に落ちる、という意味)これ、まさに「バカなる」。知的生産の本質をつく言葉なのでしょう。非才の身ながら、そんな仕事に関わる身としては心したい概念です。

*1:今回は伊丹御大が「らしい」形で登場

*2:これが素晴らしい解題になっている

異端児達の決断 日立製作所 川村改革の2000日/小板橋太郎


異端児たちの決断 日立製作所 川村改革の2000日

異端児たちの決断 日立製作所 川村改革の2000日


会社の同僚が読んでいたので借りてみた。


企業のターンアラウンド実録ものは読んでいて楽しい。ある意味ではオーソドックスに、選択と集中部分最適から全体最適へ、という施策が断行された、という事例。


面白いのは、それを突如表舞台に登場した69歳のトップが主導した、ということ。私も当時この登板ニュースを聞いたときは、「若手は居ないのか・・」と思ったものだ。しかし、日立グループは、今まで年功序列でやり過ぎてきたから、年寄りが出てきてトップダウンをすれば、皆言う事を聞かざるをえない、ということらしく、同社の体質では合理的な決断だったということだ。組織とは教科書通りには行かないものである。そして、それを主導したベテラン経営幹部達は皆、(出世の途上で小さく固まっているのではなく、一度は死んだ身、として)悟りを開いていたという事が良かったのでは、と本書筆者は分析している。だとすれば、日本の普通のミドルがいかに「縮こまっているか(縮こまらされているか)」ということである。

本書は、日経ビジネスの記事やWEB記事が土台になった本なので、学術的な色彩は無いが、パナソニックの中村改革を扱った本と比較してみたら面白いだろうと思う。


あと、この本は何が素晴らしいって、冒頭の飛行機でのエピソードである。まるで映画のようだ。そこだけでも立ち読みする価値がある。

宇宙飛行士の採用基準 たとえばリーダーシップは測れるのか/山口孝夫




工学と心理学を修めて、JAXAで宇宙飛行計画に携わる方による本。日本と世界の最先端で、さまざまな知見と豊富(なのかどうかはわからないが)な予算を使って行われる「採用」「人材育成」とはどのようなものか、を垣間みることができて楽しかった。



(備忘めも)

・「不安」と「恐怖」はどう違うか

・組織の中の「権威勾配

・大事故が起きる際の「スライスチーズモデル」

NASAでは、部下を叱りとばすようなリーダーは厳しく指導される。(それにより、その後、重大な情報が上層部に上げづらい組織になることを、過去の事故の経験からおそれているため)

・宇宙飛行士の応募の推薦文一つとっても、読む側からすると千差万別であり、その人が所属コミュニティからどの程度大事にされているかは伝わってくる

・『よく、リーダーやフォロワーというものは、潜在的な性格による別々の能力だという考えがあります。しかし、宇宙飛行士を見ていると、本当のフォロワーというのは本当のリーダー、本当のリーダーというのは本当のフォロワーだということに気づかされます。(p137)』『つまり、自分が集団に対して出来る事を正しく把握でき、行動に移すことが出来る人にとっては、リーダーとフォロワーというものはただの役割の差でしかありません。フォロワーだけで終わる人、リーダーだけで終わる人というのは、実は集団行動における自己管理能力の段階で不十分と言えます。(p138)』


・『実は、怒られるとその場では確かに被訓練者に学習が促されるのですが、長期的な視点で見ると、怒られて学んだことは忘れやすく、身に付かないということが訓練の現場ではよく見られます。さらに、学習したことの応用力も低下するようです。』『怒られて学習したものというのは、被訓練者の脳内では「訓練者が怖いから覚えている」からだと私は考えています。つまり、「怖い」という感情と「覚える」ことが重なって学習されてしまっているために(略)』『心理学的には、信頼関係のある訓練者に、穏やかでストレスのかかっていない状況で教えられる方が、被訓練者の頭にも入りやすく、覚えやすい上に応用が利くとされています。(p165)』


 選抜に「誤り」が許されない宇宙飛行士の採用プロセスは何次にも渡り、私情や主観が入らないように科学的思考の粋を尽くして綿密に設計されている。たとえば、面談の答えも印象評価にならないよう、事前の取り決めにより点数化されて処理されるほどだ。にも関わらず、最終的に合格する宇宙飛行士は、(選抜の初期の初期である)筆記試験の段階から「何かのオーラが出ている」ことで筆者に記憶されていることが多い、といううことだ。この逸話には「人間」という存在の深淵を感じた。

461個の弁当は、親父と息子の男の約束。/渡辺俊美


461個の弁当は、親父と息子の男の約束。

461個の弁当は、親父と息子の男の約束。


父から息子への愛情を、いつも弁当が運んでくれた。二日酔いの朝も、早出の朝も…弁当慣れしない父が、毎朝高校生の息子につくった弁当461食!無骨だけど愛情たっぷり!涙と笑いのお弁当エッセイ。秘伝の調味料、特製おかずのレシピなど(渡辺家の)弁当作りの極意も満載!


自分も息子(小1)の弁当制作係なもので、気になって購入。良い本でした。


子育てに、方針とか、期待とかあまり無いけれど、「カネを渡して、これで何か買って食え、と言いたくなかった」という本書の著者とは同じ気持ちあります。


この本のタイトル、良くつけたものだと思う。

非言語表現の威力 パフォーマンス学実践講座/佐藤綾子


コミュニケーションにおける「非言語表現」の重要性についてよくまとまっている上に、新書で読みやすい。著者は非常に大量の著作がこれまでにもあるようで、内容的には各書(本書含めて)で重なっているようだ。本書は、その中では新しいし、コンパクトにエッセンスが入っているので入門編としては良かったと思う。

・ブリッジング(小泉 Jr,がうまい)

メラビアンの法則よりも一歩踏み込んだコミュニケーションにおける言語:非言語の重要性比率。
(著者の実証研究によると、言葉そのもの8%、周辺言語(声)32%、顔の表情 60%。声と顔が大事。2秒の単語でも人は声色だけで多くの情報を得る)

・パブリックな場でのスピーチは1分間267文字が適切。

・尊敬される謝り方→途中で絶対に主張を混ぜない

・相手に反論をするときこそ、表情(笑み)が大事、「しかしながら」とか逆説を使わないように工夫。