コンサルタントの仕事力/小宮一慶



内容は、著者の他の本に書いていることも多い。そして、とてもオーソドクスなことしか書いていない。

でも、「結局仕事って、オーソドクスな事がきちんと実践出来るかどうかだよな」ということが体に染みて分かってきている読者には「そうだよな〜」という感想が強く残るだろう。


僕の仕事について書かれているので、どうしても強く反応(共感)してしまうところがあり、二カ所だけ特に抜粋して自分の感想を付け加えておく。



正確な理解の重要さ、曖昧な部分の理解の重要さ

P48

問題なのは「複雑なことをあまりに単純化して、割り切って知った気になってしまうこと」です。これは「複雑なことを単純化して割り切ってしまう」と言い換えることが出来ますが、これは大変危険なことです。



1と0の間には0.33もあれば0.75もあります。なんでも単純化する人は0.33は0、0.75は1と割り切ってしまいますが、それでは絶対ダメです。白と黒との間には、グラデーションの異なる無数の灰色があります。それをないものと見なして、白か黒か、0か1と割り切ってしまう人は、世の中の複雑な事象や流れに対応できず、お客さまの問題の本質を見抜く事が出来ません。

これは自分もコンサルティングの経験から痛感するところ。0.33のものを、その通りに捉え、「0.33ですよね」とクライアントに指摘することは信頼感の醸成に大きく繋がる。

なお、物事を見たり聞いたりした時に、0.33と理解し、表現できるためにはボキャブラリーが大事で、それを持ち合わせていないと、そもそも0にしか見えないもの。だから「ボキャブラリーは大事」だと若い人には良く言っている。





説得する力

P77

「説得する」というのは、こちらの意見を相手に押し付けることではありません。お客様が納得して、それならやってみようと思う、これこそが説得力に他なりません。

つまり「役説得する力」というのは、お客さまとの信頼関係によるところが大きいのです。

(略)


 信頼関係を築くには、その前提としてお客さまとコンサルタントのビジネスに対する考え方が合致していなければなりません。「金儲け第一」を目的にしているお客様と「お客様第一」を目的としているコンサルタントでは相容れる要素が無く、一緒に仕事をしてもうまくいくはずがありません。

 
 お客様とコンサルタントが「気が合う」「ウマが合う」というのも実はすごく大切な要素です。どんなに正論を述べたとしても「こんな人の言うことなんか聞きたく無い」と思われることだってあるのです。「虫が好かない」と思われたら最後、何を言っても否定されてしまうことになりかねません。

業界に長く居る者として、とても良くわかる解説だ。とくに引用の最後のパラグラフ、しっかり書いてくれていて清々しい。コンサルタントというと、ロジックと専門性、が偏重されがちだ。しかし、あくまでそれは前提に過ぎず、上に引用したことが最重要である、と自分も思う。


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